地震保険を語る

(第一回)東日本大震災のことを忘れない


「さくらさくらさくらさくら万の死者」
 これは、大船渡に住む「桃心地」という方が、日本経済新聞の俳壇に投稿した東日本大震災後の光景を詠んだ俳句である。イタリア語にも訳され、ローマの日本文化会館で朗読されたという。
 死者と行方不明者の合計1万9千9人、建物全半壊38万3246戸。これが東日本大震災から1年を経た時点で公表された被害の実態だ。
 平成23年12月4日付の日経新聞「春秋」にはこう書かれている。
「忘れられるのが怖い。そう感じている被災者が多いと聞く。(中略)これから私たちが長く試されるのは、頭の記憶力ではなく心の共感力ではないか。」と。
 今回から12回にわたって、地震保険について語りたいと思う。誤解を恐れずに言えば、保険というものは、「心の共感力」を経済的な仕組みに変えたものであるように思える。詩人の谷川俊太郎は、「愛する人のために」という日本生命がCMに使った詩の中で、保険をこう表現している。

  保険にはダイヤモンドの輝きもなければ、
  パソコンの便利さもありません。
  けれど目に見えぬこの商品には、人間の血が通っています。
  人間の未来への切ない望みがこめられています。
  愛情をお金であがなうことはできません。
  けれどお金に、愛情をこめることはできます、
  生命をふきこむことはできます。
  もし、愛する人のために、お金が使われるなら

 保険の原点には、「一人は万人のために、万人は一人のために」というお互いの助け合いの精神が横たわっている。地震保険もまた同じである。 (文責個人)

日本損害保険協会 常務理事 栗山泰史