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日本人とは何か

第13回 ノルウェーのフィヨルドと日本の海

公益財団法人東京財団
上席研究員
小松正之
2016年8月22日

話題が豊富なノルウェーの人々

甘えびの加工場リンゲン・レッカー AS社(写真)はノルウェーの北極圏北緯69度40分で東経18度56分に位置する人口66,500人のトロムソ市から北東約70キロ程度のフィヨルド沿いの寒村レナンゲソイラ(Lenangsoyra)に所在する。同社は、現会長の祖父の時代1910年代に設立された。長い歴史を誇り漁業と地域に貢献してきた。現在19名の工員を雇っている。現在は夏休みなので2人の若い女性がアルバイトで働いているが、普段は全員が年配の地元出身者である。

其処に行くには、途中約20分間のフィヨルドを渡るフェリーの乗船を含め約2時間のドライブを必要とする。私は2人の生鮮魚漁業協同組合の専門家2人が運転し同行する栄誉を提供していただいた。この間私はこの2二人ととても多くのことについて対話した。EUの英国の離脱の問題、漁業とフィヨルドと大西洋サケ養殖業の影響の問題などである。 一番に盛り上がったのはノルウェーのノーベル文学賞受賞者である「Knut Hamsun」などである。往復4時間も話し飽きることがない。日本人は、教養が不足すると思える。


クノット・ハムスンとは

ハムスンは1859年にオスロから約200キロ北の街ロムに生まれたが、彼はノルウェー北部の土地柄が気に入り北部地方で生涯の大半と余生を過ごした。彼は現実主義(レアレズム)や自然主義を否定し、精神の語りかけるものの重要性を説き、20世紀の新ロマン主義のリーダーとして考えられている。彼の作品には1920年に書かれた「ハンガー(飢餓)」があり、若い作家が、記事を新聞社などに売り歩き、その日暮しをする中にも精神的な葛藤と自由な精神の思索と思考を描く。彼はヒットラー総督に気に入られ、利用されたと言われるが、実際はヒットラーから召喚されて、逆にヒットラーを説教して、1週間も不機嫌であったと伝えられる。彼の作風はトマス・マン、フランツ・カフカ、ヘルマン・ヘッセとヘミングウェーらに影響を与えた。現在でもHamsunを好きなノルウェー人は非常に多くノルウェー漁業協同組合の2人が、良く語らい、現在でも、ノルウェーでは大変な人気のある作家である。

首都オスロの国際空港の書店でようやくHamsunの英語訳を「Hunger」と{Mystery}の2冊買い求めた。ついでに「人形の家」や「Perr Gynt」を含むイプセンの4つ戯曲を購入した。以前も「アウンサン・スーチー」や「イェルサレムの歴史」など非常に有名で内容が濃い著作をいくつか購入している。


日本人とは何かの思想と宗教感

これらの作品で考えることは、風土や戦争の歴史、人口と宗教が国々や文化に多大な影響を与えている。日本人の思想には土着宗教や仏教など移入宗教であり、風土、気候と食べ物である。

ノルウェ-は総人口400万人で極端に人口の少ない国である。また、個人の自立がなければ、国は自立できない。しかし日本は自然にも食べ物も人口にも恵まれ、島国で他国の侵略に悩まされない。「イェルサレムの歴史」を見れば明らかだが、ユダヤ人の先祖アブラハムが誕生、モーゼの出エジプトあり、戦争の歴史であり、救いを求める歴史である。バビロニア、ペルシア、ギリシャとローマ帝国、そしてアラブ帝国ウマイヤ朝とオスマントルコと英仏とロシアの進出に続くが、その間絶え間ない戦争と救いをもたらす神と地上の最終日をもたらす思想でいつも満ちている。これらがユダヤ教、キリスト教やイスラム教と密接不可分である。

日本人は別の歴史と宗教を持つ。だから、西洋やイスラムの人々と宗教観、思想感と人生観が異なるのは当然だ。そして日本人には他民俗の思想と宗教観の理解も容易でない。日本人とは何か。日本人の弱点は、その風土宗教と思想の違いから他の民族や異文化を到底できない宿命を負わされていることではないだろうか。



リンゲン・レッカー社の女性社長と筆者他 2016年6月


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