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日本人とは何か

第15回 大局観のない豊洲移転論争

公益財団法人東京財団
上席研究員
小松正之
2016年9月19日

築地と豊洲の本質的問題

小池百合子知事の「豊洲移転と築地閉鎖の延期」の発表がなされた。知事は(1)食の安全性を最優先とする(2)巨大な公共投資の精査(3)情報の透明性の確保を挙げた。私は、「築地市場と豊洲市場」を本質的な視点から取り上げたい。

公的市場としての築地市場と豊洲市場は本当に必要なのだろうか。中央卸売市場は1923年(大正12年)に制定した中央卸売市場法に基づき設置された。1918年に富山県の魚津市で米騒動が起き、政府が中央卸売市場を設定して、食料の集荷と配分の機能を負わせ、都市の消費者の為に、小売市場への安定供給と、卸売物価の引き下げを目的とした。


公的中央卸売市場の必要性は低下

しかし、現在戦後70年を経て水産物と青果等流通形態は大きく変わり、中央卸売場を経由しない市場外の流通も現在は50%近くに達する。また仲卸業者か買参業者を通さずに、卸売業者から直接小売業者やスーパーマケットに販売するものや、築地市場が荷物の中継点になっているものも多い。これは本来の市場流通とは異なる。法律に基づく中央卸売市場とは本当に必要なのか。

公的な中央卸売市場の必要が薄い場合、それは建設・整備は民間投資で賄うべきではないか。オークランンド市場は政府が建設を行い、原資として30年程度の起債を卸売り業者など入居者が買い取り、その買取者の所有物になる。自らが資金負担しないものは真剣に口を挟まない。


豊洲で何が変わるか

食の品質と衛生の向上は閉鎖性の市場で確保されるとの発想である。第7街区の卸売棟と第6街区の仲卸売棟の温度も、それぞれ10.5度と25度となる。水産物の劣化の進行を防止に海外市場は0度を採用する。そして、水産物の置き場と入札場所を分離する。働く人の健康に配慮するのか水産物の衛生と品質を維持するのか、中途半端な対応は避けるべきだ。

オランダの花市場や、ノルウェーとアイスランドの水産物入札では、全てITにより、どこからでも入札するスシステムである。豊洲市場では、水産物の価格決定が、人対人のせりや相対で行われ、市場内の売買参加者に限定される。これからは、どこからでもだれでも購入の資金信用力などを満たたせば、ITで豊洲市場の水産物を世界のどこからでも買え、羽田空港から購入物をシンガポールや上海とソウルなど世界にその日中に送付するシステムにすべきである。更に豊洲は水産物の集荷のセンターであるが、卸売業者と仲卸業者ともに当然に豊洲市場に集まるものとの期待感と願望を有する。消費者の利益を代弁し、安定供給の為に日本沿岸漁業の資源管理に積極的に主導権を持つべきだが、その様子がない。

豊洲市場施設内の輸送も、仲卸業者は1社ごとにターレ・トラックを使用する。オランダの花市場を見ると、運送小型トラックの導線が市場内に敷かれ、自動での運搬が可能だ。豊洲では一人一人が、500台以上のターレを運転するので、経費が膨大になる。施設内合理化には手をつけず高コスト体制を維持する。

豊洲市場では近代的な構想が具現化されない。5,800億円もの巨大資金を使いながら、箱物中心でシステムやソフトの改善が薄い。築地のシステムの継承である。


専門家会議ではなく公開の大局的委員会を

汚染土壌対策の専門家会議が設定されるが、本当に必要なのは、土壌対策だけでなく、汚染物質の食品への影響、放置される放射能対策と、流通と食の安定的持続確保をめぐる根本を検討する、大局観のある委員会の設置であろう。それも一般市民に公開すべきだ。

日本人は、既得権にしがみつき、改革の機会を有しながら、それを実行しようとしない。本件では東京都役人が民間を主導せず、民間が率先して近代化を提唱することもなく。建設も全て税金に頼り切り、入居者も、負担額も薄いので自らの意見を反映できない。すべての「ツケ」は納税者である国民に回ってくるが、国民も自分が負担しているという意識がない。問題が将来の世代に先送りされる構造だ。このような有様では日本の将来はどうなるのか。



新豊洲市場 第6街区仲卸業者ビル 2016年8月著者撮影


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