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日本人とは何か

第22回 トランプ大統領の最新事情

公益財団法人東京財団
上席研究員
小松正之
2017年3月23日

トランプ大統領と100日

最近米東西海岸に行き、米国連邦政府の役人、州政府の役人、NGOと大学研究所の教授や弁護士、産業界と地域住民を含め幅広い人たちとトランプ大統領の政策や今後の見通しに関して意見の交換をしてきた。

本年の1月20日にトランプ大統領が就任していらい、すでに60日余りが経過した。そこで米国のジャーナリズムは、「トランプの100日間」と題して、その軌跡を振り返り評価に努めていた。トランプ大統領は歴代大統領とは、自分の政策が大きく違うということを前面に押しだしたいのとの意向が強く窺える。


政策の違いはあるのか

トランプ政権が打ち出した政策の際立ちは、医療や社会保障制度である。オバマ大統領が貧困家庭まで対象とした、オバマ・ケアの大幅な削減である。日本にとっても影響があるTPP(環太平洋パートナーシップ条約)の締結の否定である。メキシコ国境に壁を作る発言、イラン、ソマリア、イエメンなど6か国からの安全保障上の目的での入国の禁止である。

実際に議論が進むと、オバマ・ケア(無保険層を民間会社が提供する健康保険の加入促進)でも、共和党内部でも、オバマ・ケアの対象削減に反対の人が多く、2018年の下院議員選挙を念頭に、到底大統領案(実際は共和党下院案)では、選挙は戦えないとする意見が強く、次第にもともとのオバマ大統領の制度に近づいてきている。また、TPPは、民主党のクリントン候補とサンダース候補も、米国の国内の雇用を削減する可能性があるとして反対していたし、移民入国制限も、メリーランド州とハワイ州の連邦地裁で3月、大統領令の指止め命令がくだった。こうなると鳴り物入りで就任したトランプ政権も、今までの政権と何が異なるのかという、論調が、米国のジャーナリズムでは出ている。


環境・海洋政策

トランプ大統領は、経済発展を優先させ、環境政策の是正を前面に出している。地球温暖化対策はオバマ政権が偏って作り出された政策であるとの考えが強い。環境庁や商務省大気海洋庁(NOAA)の予算を大幅に削減する案を打ち出した。EPAは93%の削減で73億ドルからわずか5億ドルに削減と伝えられる。また、NOAAの予算も大気・海洋関係の地球温暖化対策費を中心に全体の平均で15%を削減する。

水産関係のNMFS(米国水産庁)の予算は5%の削減である。

ロス商務長官は、水産政策は支持すると述べた。長官は米水産物消費の90%を輸入に頼っていることが問題であり、この解消を新たな政策の柱とした。この問題は米国の根本問題として、行政は数年も前から承知していたし、そのギャップを埋める政策として養殖業の振興政策は、すでに前政権から採用し、振興していた。

何も新しいことではない。アラスカ産の高価格の水産物は日本などへ輸出に回し、低価格のバナメイ・エビや白身魚のテラピアやパンガス(ナマズの一種)は米国内のスーパーマーケットに行けば、5キロもありそうな袋入りで安価に売っている。

ニュ-イングランドやチェサピーク湾地方の17世紀から始まる漁業の歴史が比較的長く、沿岸小型漁業が多い地方では米国連邦政府の漁業管理政策(漁業者に個別に漁獲量を割振り、漁獲を制限する方法;キャッチシェア)に反対する漁業者が多い。この点は日本の沿岸漁業者も似ている。伝統的な漁獲の方法に戻りたい人たちのトランプ政権に対する期待は大きい。

また、メリーランド州、バージニア州でも、厳格に漁業・資源管理をやられ過ぎたと感ずる漁業者はトランプ政権やホーガン・メリーランド州知事(共和党)に漁業者寄りの政策への揺り戻しを期待しているが、一方、連邦政府の役人、科学者とNGOなどは現制度はゆるぎないものとなっているので、大統領も州知事も制度を無視した越権的な介入は、不可能であるとみている。

海洋・水産政策に詳しい人たちは、トランプ政権に専門家がおらず、このまま時間がたっても、明確な政策が打ち出されるとみる人はいない。トランプ政権はどこに行くのか注目したい。



米連邦政府職員ケビン・チュー氏と。アナポリスにて2017年2月


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