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日本人とは何か

第23回 三陸海岸の広田湾と米チェサピーク湾(その1)

公益財団法人東京財団
上席研究員
小松正之
2017年5月9日

チェサピーク湾は広田湾の400倍

岩手県の最南端の広田湾と米国東海岸にあるチェサピーク湾を比較するとその大きさと広さは歴然と異なる。チェサピーク湾が大きい。広田湾は北緯38度58分、東経141度39分であり、チェサピーク湾は39度33分、西経75度57分に位置する。面積は約30平方キロメートルで、後者は11603平方キロメートルであり、約400倍もある。その流域面積が23200平方キロメートルの瀬戸内海の半分もある巨大な湾である。しかし広田湾が唯一勝るのが深さで平均約50~60メートル、後者は6.4メートルであり、また、塩分濃度が広田湾では海水と同じ34パーミル(1000分の1)で、チェサピーク湾は淡水と同じところから湾口近くは30パーミルである。流入河川は気仙川と小さな川が7本に対し後者ではサスケハナ川、ポトマック川など12本の大型河川と150本の中型河川と10万本の小川がある。湾の奥行きが広田湾はたったの9キロだが、チェサピーク湾は322キロで、東京から仙台までの距離がある。私はチェサピーク湾から森川海と人との関係を学ぼうと考えた。


気仙川・広田湾と森川海と人

森川海の研究の必要性は、長い間叫ばれている。日本でも森に木を植える運動があったり、魚付き林の重要性を訴える話が、日本各地に残ったりしている。水産庁に勤務している時代も、林野庁、環境庁と水産庁の協力で「森川海」の調査研究が行われたり、その推進のために予算があったが、基本的で本質的な研究と調査が行われていたか疑問を常に持っていた。水産庁と農林水産省の資料にも各地で植林の活動が行われ、その地点が全国マップとして表示されてはいたが、その植林の規模で、どんな植種でとなると、答えはまったくない。それと、植林によって、川の水質、流量と栄養状態の変化と環境や生態系の回復にどの程度の寄与か評価や分析はなかった。


地方再生は自然の活力から

私が2002年ごろから休日を利用し寸暇を惜しんで日本国中を旅したのは、クジラの歴史と文化を探訪することを通じて日本の田舎の現状を知り、かつては栄えた日本の沿岸や田舎がどうして衰退したのか、どうしたら元気を取り戻せるのを探りたい、現地を見て現地の漁業者や農業者と林業者と地方の住人と語り、衰退した地方を、また復活できるのかとのきっかけとヒントとをつかみ、再生の足掛かりとしたい、と思ったからである。

地方の漁業、農業と林業の再生は、その地方の資源と自然とそれらの価値を十分に活用することから始まる。したがって、地方の再生も活性化もその地方の持っているものの価値と良さ(問題も含めて)理解し、引き出すことからであると考えたのである。

私の田舎は、岩手県陸前高田市広田町である。森川海のプロジェクトも我が国の典型的な片田舎であり80%の山と森林に囲まれて、三陸海岸でも湾の広さが最大規模の海の幸に恵まれる陸前高田や住田町の気仙川と広田湾の地域から始めたいと考えた。


世界から学ぶ自然の活用と研究

私は、2009年から世界を回りだした。モントレー水族館を訪れ、米国モントレー湾の再生について、学びたかったからである。その後は豪州のグレートバリアリーフに出かけた。2010年頃である。陸域と海域の関連の調査活動について学びたかった。

2011年3月11日に、東日本大震災。大津波が東日本を襲った。わが故郷の陸前高田市も壊滅的な被害を受けた。このことによって、自分の行ってきた活動をさらに加速化した。

2015年から、基礎的な情報を集積するプロジェクトを開始し、スミソニアン環境研究所やモントレー水族館にも相談し、調査を開始している。

世界をめぐり日本を訪ねれば、このプロジェクトが重要であることを確信し、さらに難しさも認識してきた。このプロジェクトが基本的情報を提供して、他の地域のモデルとなることを期待していることが、的を射たものであることも認識した。

そして世界最大規模の環境研究機関スミソニアン環境研究所から学ぼうと思ったのである。



(写真左)米国東海岸チェサピーク湾  (写真右)岩手県陸前高田市と広田湾


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