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日本人とは何か

第24回 福島第一原子力発電所事故と福島漁業

公益財団法人東京財団
上席研究員
小松正之
2017年5月11日

1100年振りの大津波

東日本大震災と福島第一原子力発電所の事故が起きたのは2011年3月11日であった。それから大量のセシウム134などの放射性汚染物質が太平洋に流失して、福島県、宮城県と岩手県の漁業は壊滅的な影響を受けた。マグニチュード9.0の巨大地震と津波は明治29年(1896年)と昭和8年(1933年)の大津波を経験するは岩手県では珍しくないが、金華山以南では、869年(貞観11年)約1100年振りである。

大津波による漁港、漁船と水産加工場の復旧と再建は、遅れ気味であったが、何とか実現した。

問題は福島第一原子力発電所の原子炉の崩壊により流出した放射性物質である。これらの汚染物質であるセシウムなどは魚介類の体内に蓄積され、多くの魚介類が出荷停止や自主規制の対象となった。魚介類の暫定規制値500ベクレルから規制値100ベクレルに下げられて、食品としての安全性はより厳重に確保されるようになった。しかしながら、福島県産の魚種を中心として、水産物の流通と消費は一向に伸びる気配が見られない。


福島県産魚は今のところ安全

国や福島県は2011年4月から魚介類の放射性物質の蓄積のモニタリングを実施しこれまで42500件に及ぶ検体を調査した。

福島県漁業協同組合連合会(福島県漁連)が事業主体になって、大震災の翌年の6月22日から、相馬原釜の沖合底引き漁業者を中心に、汚染が少ない沖合の漁場での試験操業が開始された。当初は柳ダコなどタコ類2種とツブガイ1種の合計3州が漁獲の対象であった。その後試験操業は次第に、漁獲対象魚種、漁業の方法と操業区域などが拡大して現在では97種の魚介類が対象とされ、ほとんどの魚介類が漁獲されている。

最近の福島沖の魚介類の放射性物質蓄積量を見ると総じて検出限界以下(5~7ベクレル程度)であり、安全な水準だといえる。しかしそれでも多くの消費者が買い控えている。そのため、福島県の漁業生産量も流通量も多くならない。


東電も県も丁寧な説明せよ

多くの消費者は、福島第一原発の廃炉の対応状況が不透明であるので、福島沖海域も汚染されているとの印象を持とう。その結果、福島県産の魚介類放射汚染値が基準値を下回っていると発表・公表しても半信半疑であるのではないか。

実際に福島第一原発は綱渡り的に現在汚染水を原発の敷地内に何とか保留して、海洋への流失を避けているので、海洋汚染は改善がみられる。しかし、廃炉の作業は予定から大幅に遅れており、米ペンシルベニア州スリーマイル島原発に倣った水棺封じ込め方は予定通り進んでいない。予想以上に原子炉の破壊状況が大きく、作業の大幅な遅れが生じている。汚染水の保有も時間との戦いだが、現在は、海洋環境の保全は図られている。

このような現状説明が東京電力、福島県から丁寧に国民や消費者になされない。なぜ魚介類の放射性物質の数値が下がったのかを客観的科学的に説明すれば、国民と消費者も納得するのではないか。


福島漁業者は復活の努力を

試験操業でほとんどの魚種が漁獲対象となった今でも、福島県の漁業生産量を見ると相馬原釜で震災前の9%の漁業生産しかなく、いわき地区ではわずか5%である。震災前の福島県の沿岸域の漁業生産量25000トンのわずかに8%の生産量しかない。

また、このような慢性的な漁業生産と収入と不足では、十分な雇用労賃も乗組員に払えまい。悪循環である。思い切って宮城県と茨城県の漁業者にも漁場を開放して、その見返りに福島県の漁港で漁獲物を陸揚げしてもらい、水産加工と流通業へ原料供給と地域経済の活性化の役割を果たしてもらう。その際は、セリや入札などによる値決めとし、またセリの参加人を福島の消費地市場(いわき、郡山、福島と仙台市場からも売買参加人を募る方法もあろう)も巻き込むことも大切だ。震災後福島県の漁業者、水産関係者は委縮し受け身に回っているが、補償金頼みとあきらめの気持ちを捨て積極的に前に出ることだ。



福島県小名浜漁協に設置された放射能測定器 2017年1月 著者撮影


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