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日本人とは何か

第28回 明治維新は正しかったか(その1)

公益財団法人東京財団
上席研究員
小松正之
2017年7月27日

米独立戦争から見る明治維新

最近、明治維新を見直す動きがある。司馬遼太郎「坂の上の雲」だけでは真実が見えない。米国史と日本史も教科書や正統の歴史を読んでいてはわからない。そういった点で興味深いのが、ハーワード・ジン著「米国の人民史(A People's History of the United States)」である。彼は造船所労働者から、空軍勤めとその後、軍奨学金で大学に行きコロンビア大学で博士号を取得し大学教授まで勤めたが、学生を支援し大学当局から解雇された。庶民や弱者の立場に立つ人であった。

ジンが米国は統治者が弱者を搾取する歴史であると喝破している。英国からの米国の独立運動も所詮は米大陸に渡って財産をなした富裕移民と、英本国の国王と結びついた富裕特権階級との権力闘争であったとみる。

1776年独立宣言と1783年の英からの独立は、米大陸富裕層が英本国の相手方に勝った。米大陸の多くの庶民・貧困層には、独立戦争など大迷惑だった。ジョージ・ワシントンの指揮の下で戦ったのは、庶民・貧困層だった。哲学者トマス・ペイン「コモンセンス」では米が独立するのは常識(コモンセンス)であると説き、庶民・貧困層はこれに応集し戦った。そして、死んだ。第2次世界大戦の日本も多くの庶民が徴兵され亡くなった。もとは明治維新にあるとの見方がある。


戦争と領土拡張主義

米政府は、ナポレオンが大陸での戦争に疲弊した際に、仏からルイジアナを購入した。その後1836年スペインから独立したメキシコのテキサスを独立州とし、1845年に戦争を仕掛け、アリゾナ、ネバダ、コロラドとカリフォルニアなど膨大な国土を手に入れた。さらに太平洋に進出、ハワイを併合しスペインからフィリピンを奪った。政府が領土的野心をもって軍事力を強化し、鉱物、石油やゴムなど天然資源と米国製品の販売先であるマーケットの確保を目指した。1853年ペリー提督が日本に開国を迫り、第2次大戦前は太平洋覇権と中国市場を巡って日本と対立し第2次世界大戦の引き金になった。


自由と平等より財閥と軍事

資源の獲得とマーケットの拡張にはロスチャイルド財閥(欧州)、ロックフェラー、バンダービルトやカーネギーなどの財閥が結び付く。彼らは石炭、石油資源開発と鉄道敷設などで巨大な富を得て、販売市場でまた巨万の富を築く。

米国独立宣言の「自由と平等」には米インディアンも黒人も含まれない。白人のみであった。さらにアイルランド系、イタリア系や東欧系の移民は差別された。戦前は日系が、最近では南米系とイスラム系が差別される。選挙では米大統領は米国民からは支持を獲得しても、大統領就任後は、「米社会は庶民や貧困層」の為というより「軍事的関心や財閥」の利益を優先するとジンは見る。


明治維新と軍閥・財閥

明治維新以降の日本史を見直した歴史書が多い。広瀬隆著「日本近現代史入門」(集英社インターナショナル)などである。日本の明治維新も米国の独立戦争と似る。それより悪いといえる。

「五か条の御誓文」がある。これには「官武一途庶民に至るまで、おのおのその志を遂げ、」とは日本国民はすべて等しく政府に参加し、「万機公論に決すべし」と解されるが、薩長土肥の下級武士(写真;高杉晋作)が運よく徳川幕府を倒して樹立した政権では、それが守られなかった。明治維新は1789年フランス革命や1848年ドイツ3月革命の如く人民が起こした反権力闘争ではなく、下級武士が庶民とは遊離し、徳川幕府に対して起こした権力闘争で、徳川幕府から下級武士に権力が移行したに過ぎなかった。

彼らは藩運営に与ったことがなく政権、経済と制度の運営に何らの経験や能力もなく、「平等や公論」のスローガンは吹き飛んだ。「富国強兵と殖産興業」を掲げ軍閥と財閥に力を借り、国民を戦争、抑圧と貧困に巻き込んだ。明治維新は欧米からの侵略の回避の名目での平和に暮らしていた江戸時代の庶民を次第に第2次世界大戦に巻きこむ苦難の始まりだった。(続く)



明治維新の立役者の一人高杉晋作の顕彰碑 明治44年 井上馨が除幕 
2016年5月 著者撮影


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