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日本人とは何か

第44回 日本食のおいしさと水産仲卸の技

東京財団政策研究所
上席研究員
小松正之
2018年5月17日

豊洲市場の野菜・青果市場

最近もいろんなことがあった。築地市場から豊洲市場への移転が10月11日と本決まりになり、私もこれまで、水産関係の第6街区(水産仲卸)と第7街区(水産卸)の施設は見学した。しかし、水産以外に豊洲市場は、築地にも入っている野菜・青果、漬物と鶏卵(鳥卵)を扱う卸売業者と仲卸業者並びに買参人が商売をする予定である。その第5街区を4月に見学しとても驚いた。水産の施設とは異なり、冷蔵庫、仲卸のスペースの使い方と販売促進施設と外部見学者への案内施設が、とても近代的・現代的かつ機能的に出来上がっているのである。

水産仲卸の第6街区は、マグロも包丁を使いこなせないくらいスペースが狭すぎて、使い勝手が悪いとか、トラックでの搬入スペースが狭すぎるので、施設の外にさらに搬入のスぺ―スを建設したいなどの要望が出ている。


鶏卵卸売業

私は農林水産省に入省したのが1977年(昭和52年)であるから、41年も経過したが、築地には毎年、何回も行っている。豊洲移転が持ち上がり、ここ数年は月に数回年間30回程度は訪問している。何度通っても築地は、その日その日や季節によっても入荷量や入荷品目が違うし、訪問時間帯でも、働く人々の表情が異なる。

水産以外の方々との付き合いはなかった。それが「築地から豊洲へ」(マガジンランド)(7月出版予定)の出版を企画し予定していることから、野菜・青果、漬物とさらには鶏卵の業界の方々のお話を伺い、実態をある程度を承知しなければならない。

5月10日には東京中央鳥卵株式会社を訪問して、鶏卵の卸売業の状況をお聞きした。大きさ、卵の規格、賞味期限と産地と現在の消費動向と豊洲市場の移転後の見通しをご教示いただいた。


米国東海岸ニューヨークの食

5月の連休に、ニューヨークに行ってきた。西海岸のシアトルとカナダのバンクーバーは海産物の鮮度もよく食事はおいしいが、東海岸は私には口に合わない。今回、まともに食事をしたのは2回だけである。残りは雑貨店とスーパーでヨーグルト、果物とパン類を購入し済ませた。1度目は、パーク街付近で第48通りにあるすし店であった。養殖サケとハマチがメニューに並ぶ。結局地元の魚がない。行きと帰りのJALの機内食もサケがメイン食である(多くの航空会社がそうだ)。養殖サケで、世界中が満たされている。

グランド・セントラル駅の地下のマーケットで鉄火丼とマグロの握りと海苔巻きも購入したが、中身がサケであった。デンマークのサケ養殖機械販売の会社社長ですら、この状態はいつまで続くか疑問であると語った。

2度目はセントラルパークの南端と5番街の交差点にあるプラザホテルで友人の増谷ご夫妻と朝食をとった。映画「追憶」(The Way We Are)バーブラ・ストライサンドとロバート・レッドフォードの別れのシーンのホテルである。スクランブル・エッグ、牛肉コーンビーフ状のものとジャガイモの朝食とトマトジュースとカプチーノを飲食した。これは美味しかったが、雰囲気のせいか?


日本食の源 築地市場の仲卸

帰国後、日本食がとても美味しく感じる。日本食はいつまでも日本の生活の一部としていつまでも残ってほしいと思う。しかしそれは、これらを地道に供給しているプロ集団の築地市場や豊洲市場があればこそ可能である。その中で、和食のおいしい食材を提供しているのは水産仲卸のプロの技である。しかし、彼らはその技の素晴らしさとレベルの高さを積極的に宣伝しない。むしろ当たり前と思う謙虚さが強すぎる。日本人はこのような専門家が言葉では表現せずに、商品や作品で語る。

世界と比較するとその食の技巧の高さが身にしみてわかる。それだからこそ、築地市場の場内の寿司をはじめとする飲食店には、毎日世界中から日本の食を求める観光客が1〜2時間も待つ列をなすのである。ニューヨークにもシドニーにもパリにも仲卸という食の下積み役を引き受ける真の職業集団はない。これを大切にしたい。



プラザホテルでの増谷ご夫妻との朝食 2018年5月7日


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