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第45回 シドニー・フィシュ・マーケット(SFM)と豊洲市場移転

東京財団政策研究所
上席研究員
小松正之
2018年6月21日

SFMの歴史と民営化

SFMはニューサウスウェールズ州(NSW)政府により1960年に開設され、魚介類の小売業者等への販売で卸売市場の役割を果たしていた。

2006年にNSW州政府の方針で民営化され、W民間企業すなわち、供給者の漁業者、買い取り業者である卸売業者他と市場内に区画を保有しているテナント;レストランと小売店が株主となり、運営責任を有することとなった。彼らが理事会を形成し、その下に市場運営会社;シドニー・フィシュ・マーケット株式会社(SFM)が設立された。民営化前は魚介類はすべて、マーケット(市場)経由販売が義務であった。民営化後はその義務は無くなったが、市場の取扱量は、増加している。


2022年までのSFMの移転

ところで、SFMが2022年までには、Blackwattle湾対岸の敷地に移転することが2017年11月にNSWの首相と計画大臣から発表された。これはこの湾岸周辺の再開発の大きな目玉になる一大プロジェクトとして位置づけられている。1960年に市場が出来た折には、スペースもゆったりしていて問題がなかったのであるが、年々運送用のトラックの出入りが激しくなり、手狭になった。

当初は予定しなかった観光用の小売販売店が出来て、観光客も増加した。そこで、現状地で高層化などを図り、何とか改善をしようとしてみたが、テナントや入居者からは工事が邪魔であると反対の声が上がった。そこで、移転の話が持ち上がったのである。

当初の移転案は、卸売市場としての流通と食の安全の機能が第一で、それ以外の小売店舗の維持はあまり考慮されなかったことから、テナントと小売から反対の声が大きくなり、NSW州当局も計画を変更せざるを得ず、新市場は観光市場としての機能と水揚げ市場としての機能を持たせて、市場の中には観光客がオークションを見られるように配慮した建設計画となっている。すなわちスロープ型で2階に上りながら、1階のオークションの現場を見て、2階の小売りや飲食店にたどり着く設計である。

しかし、未だに小売りや飲食の一部は移転に反対の声があり、現状地での営業を望んでいる。ここは交通・道路も輻輳し自動車も入りにくくスペースもない。移転には株主の半分を占める漁業者は大賛成であるが、テナントである小売店と飲食店が反対である。


築地とSFMの移転問題の類似性

5月に新豊洲市場と築地市場の視察と、関係者からの話を聞きにぜひ訪問したいとSFMの販売部長から要請された。SFMの移転はNSW州として将来のシドニー都市開発の一大目玉であり、都市開発と観光客の招致とシドニー市の将来とって非常に重要との位置づけである。ところが反対派が燻っており、築地市場での豊洲市場への移転に関して賛成と反対の声も含めて聞きたいとの要望も述べられた。

SFMと築地市場の移転問題に関しては、類似性がみられる。①移転の反対派がいる点。②なかなか移転が決まらず、ようやく決定したが移転反対の人が多い点。③現状地での再開発を目指したが、失敗した点。④卸売市場の機能優先か、観光機能を優先するのかの戸惑い。


豊洲の視察と物流の問題の発見

SFMのグラハム・ターク会長とブライアン・スケッパー社長を含む3名が5月17日と18日の2日間にわたり、豊洲市場の視察と、築地市場で卸売業者を代表して伊藤裕康中央魚類株式会社会長他、仲卸業者組合会長と買参人協会会長他の市場関係者との会合を持った。ところで、今回彼らが最も興味を持ったのが、水産卸業者の入る第6街区が4階建てで、1階から4階までエレベーターで水産物(荷物)を移動させなければならない点であった。SFMの新ビルディングも3階建ての予定だそうで、人と物を一緒に移動させるのか、または別にするのか、その際に所有者の明確化など、豊洲市場の水産卸の縦方向の物流が本当に問題なく機能するかどうかがSFMの一大関心事であった。豊洲が機能を開始してから、1年後にまた、その状況を視察に来たいとの希望を表明した。



シドニー・フィシュ・マーケットの電子入札風景 2018年2月著者撮影


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