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日本人とは何か

第47回 地球の将来はネズミのものか

東京財団政策研究所
上席研究員
小松正之
2018年8月9日

陸と海の高温

ここ数年異常気象とは言わなくなった。毎年、西日本には大雨が降り、河川の氾濫と土砂崩れが起きて人命が失われた。

国連気候変動に関する政府間パネル(IPCC)によれば、気温の上昇は過去100年で0.85度で、日本の気温の上昇は1898年から現在まで1.0度上昇(気象庁)と報告される。しかし、私たちの実感する気温の上昇はこんなレベルではない。最近でも35度を超える日が続く。

IPCCは現在の気候変動の原因は90%の確率で人間によるものであると結論付ける。

海も海水温が高くなっている。太平洋の北海道沖と三陸沖で、過去100年間の海表面の温度上昇は釧路沖で1.09度、三陸沖で0.69度である。最も深刻なのは大陸と日本列島に挟まれて海盆を形成する日本海中部と東シナ海で、1.71度と1.27度の上昇である。


三陸の海と環境悪化

7月23〜24日、岩手県陸前高田市広田湾に行った。3月下旬からマヒ性の貝毒をもたらす植物鞭毛藻アレキサンドリウムが発生し、これがホタテやムラサキイガイの中腸線にたまり出荷規制値の4.0MU/gを超え、出荷停止が続く。

24日、広田湾漁協では、ウニの開口があった。ウニの漁獲が昨年来大幅に激減し、黒色の糞が多く、卵巣が小さい(写真)。昨秋のアワビ開口でも漁獲量が激減していた。津波は海底のヘドロをさらって一時的に良好な海底環境をもたらしたが、2016年あたりから、沿岸は悪化する。震災後の復興工事で山を壊し、森を傷め、河川底の砂利を取り、大堤防で高田松原と小友浦を取り巻き建設し、その前面と後面の湿地帯、砂浜と河口域を喪失した。

米国スミソニアン研究所コルニス博士他の共同研究(注)論文では、海岸線をコンクリート、鉄板や砕石などで固めた場合、その前面の海岸線に生息する魚類や甲殻類は減少する。一方、自然の湿地帯や海岸線が長ければ魚類・甲殻類の生息数は増大する。


地球上の第6番目の絶滅

6月、E.O. Wilson著「Half-Earth」をシアトルの書店で探していたら女性店員からElizabeth Kolbert著「The Sixth Extinction」を勧められ、最近読み終えた。

地球上に生物が誕生したのは、化石や地質の研究をたどっていくと約5億4200万年前と言われる。生物は5回の大量絶滅を経験している。第1回目が4億4000万年前の氷河の発達と後退による三葉虫など浅瀬の生物の絶滅で、第3回目は約2億5000万年前の古生代と中生代の変わり目ペルム紀(Permian)と三畳紀(Triassic period)の間に起きて、生物の90%が絶滅したと言われている。第5回目の絶滅は白亜紀(Cretaceous period)と古第三世紀(Paleogene)の間で起こり、恐竜が絶滅している。このような絶滅も数百万年から数十万年かけて起こっている。


人類の世代かネズミの世代か

人類に起因する生物種の絶滅は、産業革命が起きた1820年代からわずか200年間に起きている。特に戦後の70年間に起こっている。日本のサケも30%まで大きく減少、サンマ、するめいか、クロマグロとホッケも絶滅の危機だ。パナマの黄金のカエルにカビがたかり絶滅、北太西洋のペンギン(Auk)を人間が食料とし絶滅させ、グレートバリアリーフのサンゴが消滅し、魚類も住みかを失った。アマゾン熱帯雨林が伐採され森で生活する昆虫、ほ乳類と鳥類が大幅に減少した。世界中のチンパンジーやゴリラやオランウータンも半分に減少した。

人間が人間以外の生き物を絶滅させ、温暖化で人間にとっても住みにくくする。この今の時代を科学者は「人類紀(Anthoropocene)」と呼ぶ。人類が地球の支配者となり、人類由来の原因で、環境の変化が著しい。人類自体が、人類を含め地球上の生物を絶滅させる第6番目の絶滅を示唆している。著者は、それを救えるのは人類であると言う。しかし地球上の世代を人類と共に生存してきた「ネズミの世代」にするのも人類次第であると驚愕の警告をしている。さて、現代の便利で楽な生活にどっぷりつかった日本人もその生活様式・行動をどうするべきかが問われる。



広田湾のウニ;卵巣が小さく黒色の糞が多い


(注)Linking the Abundance of Estuarine Fish and Crustaceans in Nearshore Waters to Shoreline Hardening and Land Cover. この論文はSpringerlink.comでアクセスできる。


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