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日本人とは何か

第55回 環境と日本人

東京財団政策研究所
上席研究員
小松正之
2019年2月7日

環境問題が身近に

日ロ首脳会談、2回目米朝会談、英のEU離脱、TPP11と日EUのFTAの発効、消費増税など政治的、経済、社会的な動きがあるが、人類と日本人が良い方向に進んでいるのだろうか。1月26日放送のNHK「チコちゃんに叱られる」で「チコちゃんが今一番取り組んでほしいものは環境問題」と言った。

ところで昨年は、網走に行った。釧路湖・釧路川からアオコを大量に含んだ河川水がオホーツク海へ流れ込む。海底と水質に悪い。噴火湾ではホタテガイ斃死が20%に達した。


瀬戸内海の脆弱化

本年1月、広島湾から兵庫、岡山と瀬戸内海のカキ養殖を視察し養殖業者の話を聞いた。近年、瀬戸内海は法律の効果できれいになったというが、私にはそうは見えなかった。海の色が三陸と異なる。青くなく、くすんで見える。貧栄養が進んで、100万人都市広島市から化学物質・環境ホルモンが流れこんでいよう。太田川集水路は河川水が動かない。水質中の物質が停滞するし、カキも動けないので栄養の吸収しようがない。瀬戸内海は、沿岸域が埋め立てられて、自然海岸はほとんど残らず、人工の海岸線が50%以上を占める。コンクリート護岸や石積み海岸からは魚を含めて、生き物は大幅に減少する(米国スミソニアン環境研究所の研究)。

私は広田湾ではいつも船上で海から獲り出した生ガキを食べるが、広島湾は、生では食べられない。焼きガキで食べた。広島湾のカキは腸炎ビブリオ菌や大腸菌に汚染されて、出荷停止の処分を受けたことがある。また、岡山と兵庫のカキは1年で出荷する。2年目の夏に斃死するので、1年で出荷する。

カキは粒が小さくなり、栄養が入らない水かきの状態が長くなり、出荷の時期が遅く、シーズンの終了が早まった。水温上昇が大きいと言う。しかし、化学物質を含む下水の処理が十分でないことと埋め立てによる湿地帯、藻場や干潟の浄化機能を失ったことが大きいと思われる。これが機能すれば水温上昇も低減・改善できるだろう。


世界的な規模での海洋生態系の劣化

隣国の韓国の沿近海漁業の天然生産量は2016〜18年まで3年連続で100万トンを割り込んだ。韓国政府はこれに危機感を持ち水産資源管理の政策を強化する方針である。しかし釜慶大学金教授は浅海域の埋め立てが多すぎたという。チェサピーク湾でも、大都市が増加し、流入する河川水や下水の処理が悪化したことがバージニカ種カキとワタリガニの減少につながった。

豪クイーンズランド州沖の大保礁では白人の入植から2017年までに80%のサンゴ礁を失った。(豪政府環境省)

海が人間生活や産業活動の掃きだめに使われる。経済優先で環境・自然を破壊した。排水を海に出し、埋め立てで生物の生息地を失った。その結果、海洋生態系が崩れて、生物の住めない状況となった。そのために、漁業と養殖業が衰退し、そして生態系の象徴であるサンゴ礁も死滅した。


経済成長は環境破壊か

これを逆転させることが大切になると思う。経済成長率は環境破壊率に見えるがどうだろうか。毎年、経済学者や政府・日銀関係者は経済の右肩上がりを目指しているが、自然を崩壊し、失ったら人間は生存が不可能である。

人間は飲み水を購入するようになった。昔はそのようなことはなかった。井戸、沢や川でおいしい水が飲めた。木曽福島の空気は今でもおいしい。今ではお金と、電気を使い空気清浄機を使う。森林は豊かな酸素を生産するが、その自然の価値を私たちは、平気で開発・破壊する。食料も同じだ。天然の水産物は減少し、代用品の養殖物も環境の悪化で減少し、量と質が低下する。北海道と岩手県にはサケが帰ってこない。帰ってきたサケを三陸の復興工事で行く手を阻み殺している。サケは小型になって、卵も小さく脆弱だ。


環境の改善が最優先

日本人は、真剣に環境の改善と自然回復をしないと取り返しがつかない。昨年の夏は不快なほどに暑かった。地球上の生物が絶滅した過去5回より、大規模で近い将来に「第6回目の生物の絶滅」が到来するのではと本当に心配する。子孫に住みやすい地球と日本を残し、継承することが何事にも優先する。



広島市草津沖のカキ養殖いかだ;2019年1月8日


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