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日本人とは何か

第60回 平成と令和

東京財団政策研究所
上席研究員
小松正之
2019年5月8日

激動の平成の幕開け

平成の時代が終わり、令和の時代を迎えた。平成の30年間に自分が、何をしてきたのかを振り返ってみると平成元年(1989年)1月に私はイタリア共和国の首都ローマにいた。在イタリア日本大使館の一等書記官として赴任中で、昭和天皇の大喪の礼があり、現地の大使館でも、ご記帳のテーブルが設けられた。1989年11月にはドイツのベルリンの壁が崩壊した。イタリアでも東欧の民衆の立ち上がりが報道された。

1990年8月に湾岸戦争が勃発し、長女のメリーマウント・インターナショナル・スクールの帰国中に巻き込まれたクウェート人同級生が長期間、本国から出国できなかった。


FAOでの日本人職員の処遇改善

私は農林水産省から外務省に籍を移し外交官となっての大使館勤務であった。イタリアでは、人生を楽しめとの農林水産省の諸先輩方の言葉をいただき、イタリアでの生活を楽しもうとしたが、国連食糧農業機関(FAO)での仕事が楽しかった。私の専門は海と水産の域を超え、FAOでも、農業分野の植物・動物遺伝資源や女性と農業などの分野や熱帯雨林の開発・保護の問題に加えて、米国の分担金の未支払いによる財政悪化の立て直しや分担金に比し極めて少ない日本人の職員の増員・採用や昇格と昇任などの処遇の改善に取り組んだ。国連機関で影響力あるポストに一定以上の日本人職員の存在は日本にとっても重要なことであるが、日本国内では忘れがちだ。日本国憲法の前文にも「国際社会において、名誉ある地位を占めたいと思う。」と書かれる。少しでも憲法が言う内容の実現に貢献したと思った。



イタリア・ローマFAO職員との会食 2019年2月撮影


今だけからの脱却

2017年9月から経済界のシンクタンクが設立した委員会で「水産政策の改革」に再び取り組んでいる。世界一を誇った日本の水産業の凋落が激しいが、政府の長年の放置政策は日本国全体にとってもマイナスと考えたからである。最近、魚を食べる機会がめっきり減少した。供給が少なくなって、価格が上昇した。輸入も外国が経済力をつけて、日本が買い負けているからである。「四方を海に囲まれた魚食民族である日本人の精神と体質にも影響しよう。」令和の日本人が昭和と平成の日本人と食から異なろう。アメリカ人も魚だけでなく海藻までも食べだした。所得の上昇と健康志向である。日本は所得が上がらず、乱獲での供給の減少である。政府と漁業者も今日とせいぜい1年後しか考えない。息子や娘には跡を継がせないという。それでも既得権を守り、競争で負けたくないので企業が入ってくるのにも反対する。また、科学的な魚の管理にも反対する。漁業者のコンセンサス(内容を問わない)が必要であるという。一般人でも理解可能な言語で海と魚の管理の手法は科学である。


グレイ・プロジェクトからグリーン・プロジェクトへ

最近、海の生態系が崩壊している。砂浜や干潟が消えた。テトラポッドが多い。このことに多くの日本人が気づかない。魚や海藻が生える場所がなくなってきた。海岸線に堤防やコンクリート(グレイ・プロジェクト)が目立つ。防災が目的で、普段の生活はそこでは無視されるか破壊される。

地球温暖化が進めば北極・グリーンランドの氷床が溶けただけで7.2メートルも海面が上昇する。南極の氷床が全て溶ければ61.1メートル海面が上昇する。6000年前の縄文海進の時代には現在より4.4メートルから5メートルも海面の表面が高かった。海岸線は前進する。

自然には勝てない。自然に合わせた日本人の生活が今後は大切である。埋め立てて、コンクリートで自然治癒力や海洋生態系、生物多様性も失ってきた。私たちが考える時間の座標軸を長くとり、地球生態系の中での人間の限界を知り、自然の恩恵の理解が日本人にとっても重要である。日本人は自然と共存してきた。コンクリートに頼る非・反自然ではなく、親自然・自然活用のグリーン・プロジェクトを令和の時代の主流にしたい。

5月6日には経済学と環境学を結び付け炭素税の考えを考案した2018年ノーベル経済学賞受賞のノルドハウス・エール大学教授と会合する。日本にも来てもらいたいものである。



陸前高田市竹駒の森林を切り取った採土砂場 2017年7月著者撮影



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