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日本人とは何か

連載第68回 川はめぐみか害か

東京財団政策研究所
上席研究員
小松正之
2019年11月11日

日本は水害 世界は干害

最近の日本は河川の氾濫による水害に悩まされる。9月と10月の台風の被害と大雨であった。しかし、水は世界的に見ると何よりも貴重な資源であるが空気ほども重要ではないか。水がなければ人間は生きられない。8月メルボルンで購入したFred Pearce著「When the Rivers Dry」(川が干上がるとき)を最近読み終えた。この間に日本は数多くの水害に襲われた。しかし、世界の河川を見れば水はとても貴重であり、水をめぐって争奪戦を繰り広げている。世界の4大文明が発祥した地域も、巨大な河川が流れている場所であり、それ以外の場所も巨大で有益な河川が流れている。

徳川家康が移転を命じられた江戸は利根川の流れ出る海に開けた水の豊かな土地であった。伊奈忠次から第12代の伊奈忠尊まで202年にわたり、徳川幕府の統治する関東平野の治水の役割を負った日本の最大の街として栄えるための水資源の豊かさを備えていた。


世界の4大文明の発祥地と河川

さて、四大文明の発祥地はエジプトのナイル川、中国の黄河流域地帯、現在のパキスタン、インドと中国(チベット)にまたがるインダス川とイラクやトルコを流れるチグリス川とユーフラテス川である。ナイル川も上流に行くと青ナイルと白ナイルに分かれる。青ナイルはエチオピアに源流がある。白ナイルはウガンダとケニアと、南スーダン、スーダンを経て、下流に下りエジプトに下る。国際河川である。どこの国がどれだけの水を利用することができるのかを常に争う。最近もエチオピアがスーダンとの国境に巨大なダムを建設した。水は消費しない発電用であるというがエジプトとスーダンは信じない。ナイル川の水の利用合意は英国の統治時代1950年代のものしかない。ほとんどの水はエジプトが利用する。スーダンやエチオピアは面白くない。

地中海にサルジニア島、すなわち「イワシ島」がある。昔はたくさんのイワシが獲れたのでこの名がついた。今では、ほとんど獲れない。ナイル川の水と栄養の流れが、アスワンダムとアスワン・ハイダムの建設で変わった。


チグリス川とユーフラテス川がエデンの東

中原を制する者は中国を制するといわれた。黄河は中国人にとっては重要な河川で「ウ」大公が治水に成功したと伝えられる。現在では、灌漑と飲料水用の消費が多すぎて、雨量が少ない年には、黄河河口から海に水がたどりつかない。チグリス川とユーフラテステス川は聖書に登場するエデンの東のあった場所といわれるが、最近まで親水のアラブ民族が50万人も生存していたが、サダム・フセインに反抗して、水を封じられ、8万人まで減少した。

インダス川は中国のチベットに源流があり、インドを流れ、そしてパキスタンに流れ込む国際河川で争いが絶えない。


2050年までに水害は5倍に

EU環境省は、2015年の時点で、2050年までに水害が5倍増加すると予測する。その原因は地球温暖化よりは、河川が湿地帯や氾濫原(Floodplain)から切り離されたことの方が大きな理由であるとみている。湿地帯や氾濫原は水をためこむ機能を有する。湿地帯と氾濫原はまた水量を保持するだけでなくシルト・土壌を保持する。大雨が降っても水はゆっくり流れるし、土砂もせき止められるが、9月と10月の台風災害を見ていると、日本では湿地と氾濫原の喪失と減少であふれ出るか河川水の保水が機能しなくなった。河川敷も保水機能を有するが、水を普段から滲み込ませる構造としておくべきである。日本の歴史では水、シルトや土壌が田畑の豊かな栄養源になってきた。



陸前高田市の川原川の捨て石;水が越えやすい。生物は住みにくい。2019年10月2日


ダムの撤去と自然活用防災

最近はドナウ川、フランスのロワール川、ライン川でもダムが取り除かれ、コンクリートで直角に水流を流す河川堤防の方策に対して、自然の生態系サービス力などを活用した防災が取り入れられている。いくら堤防を高くしても、水は弱いところを見つけ堤防は必ず決壊するとは欧州の専門家の見解である。日本も荒瀬ダムの撤去が決定した。時代は刻々と動いている。


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