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日本人とは何か

連載第80回 陸と海洋生態系の破壊とコロナウイルス

一般社団法人生態系総合研究所
代表理事 小松正之
2020年8月26日

科学情報が意思決定の基本情報

私は現在、気仙川・広田湾の漁業と海洋調査のために、生まれ故郷の岩手県陸前高田市に来ている。海、川と陸環境の具体的データを集めるためである。



陸前高田の現在;復興は進んだのか。2020年8月25日著者撮影


私は行政の世界で生きてきたが、そこで意思決定するのに重要なものはデータであると肝に銘じてきた。自然科学や人文科学の基本データの収集である。農林水産省という巨大な組織の中で、関係者に説明をし、彼らが納得するための最重要事項は情報である。米国など世界を相手に国際捕鯨委員会や国連食糧農業機関(FAO)などにおいて国際交渉する際にも同様であった。人々や相手国にわかりやすい、かつ客観的な根拠である科学的情報の提供が基本である。そしてこれが最も説得力がある。

米国の女性海洋科学者が、コロナウイルス騒ぎで海洋調査船が出航できず、毎年継続して得ていた情報が入手できなくなり危機感を表明し、海洋調査の継続を訴えていた。地道であるが、水温や塩分とプランクトンの量などの基本的な情報は毎年、決められた定点で入手して、それを分析することが、大きな事件があった時の原因の分析にも役立つ。

海洋調査船などの船舶は、陸上から隔離される。とても安全で安心な場所である。私の場合は、広田湾の漁船で海洋調査を実施する。漁船は、開放系で、風が吹き、漁船乗船で調査人数も少なく、3つの密になりようがない。大型海洋調査船でも、だれも感染者がいなければ何の問題もない。



広田湾での海洋調査 2020年8月24日 著者撮影


海水温の異常な上昇

今年の夏も異常に蒸し暑く東京では気温が35度を超えて熱中症対策が叫ばれる。ところで海水温も急激に上昇している。2019年3月(最低水温を記録)から2020年3月までの一年間に最低水温が摂氏5度から7.5度までが2.5度も上昇した。夏の広田湾で8月24~25日と海表面の海水温は昨年の25度から27.5度を記録した。各観測点で昨年の最高値を上回っているし、7~10メートルの水深で、8月下旬時点でも水温は継続して上昇中である。

50年以上前の子供のころの広田湾の夏の海水浴時の海水温20~21度を大幅に上回っている。これでは海洋からエネルギーが提供され日本列島の気温が下がらない。台風の勢力も弱くならない。私たちにとっても息苦しいが、海の生物の貝類はせっかく育て上げてきたカキ、エゾイシカゲガイやムール貝が高温で出荷されずに死滅する危険がある。

水温上昇に加えて、栄養源であるクロロフィル量も梅雨時の大雨後には大量の淡水が速いスピードで流れ込むが、この淡水に栄養分が普段より少ない。ゆっくり流れる河川水は植物プランクトンなどの栄養分を含むが、急激な流れにはそれがない。広田湾に流れ込む気仙川での調査で分かった。


地球温暖化/大気汚染とコロナウイルス感染症

2020年8月21日WHOのテドロス事務局長はコロナウイルス感染症は地球温暖化/大気汚染と密接な関係があるとして「健康とグリーン・リカバリー」すなわち、自然を保護し、水と衛生に投資し、健康的な食糧生産システムを推進する重要性を挙げた。例として「パキスタンでは植林事業が開始され、英国で地球温暖化の元の石炭の使用が250年間で最低のレベルに低下し、スペインでも15のうち7つある石炭火力発電所が閉鎖された。パリでも15分以内で徒歩や自転車で配達ができるシステム開発にコミットした」と紹介した。コロナウイルス感染症発生は1世紀に一度の出来事であるが、これを「1世紀に一度の未来の子供たちに向けて、世界を形づくる機会である」と、テドロス事務局長は強調した。

私たちは、これ以上地球を破壊することはできないのである。人間も生態系の一部であることを肝に銘じるべきである。禍を転じて福と為す。コロナウイルス感染症の発生を機に、経済中心主義から、環境保護と環境との調和を図るべきである。それ以外の選択肢はないと、「森川海の基礎データ」は語る。


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