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日本人とは何か

連載第81回 天の恵み太田川と広島湾

一般社団法人生態系総合研究所
代表理事 小松正之
2020年9月17日

森;中国山地花崗岩とブナ林、川;太田川水系と海;広島湾の旅

1年半ぶりに広島に行ってきた。2019年1月も広島のカキ養殖業の視察はした。今回は広島湾と江田島・能美島と倉橋島付近のカキ養殖業と海洋環境について、実際に観察し、科学者からの話を聞いた。加えて、最近の広島中央市場では漁業生産物の市場取扱量が大幅に減少している。4.2万トン(2009年;資料;広島中央卸売市場)の取扱量が2.2万トン(2018年)と半減であり、将来展望は苦しい。



太田川水系分水嶺 資料;太田川河川事務所提供


今回は、著者が故郷の岩手県で森川海の関係を調査・研究する「気仙川・広田湾プロジェクト」を持っているので、中国山地、太田川と広島湾の関係を調べた。



太田川の支流の滝山川の温井ダム 2020年9月13日著者撮影


太田川は大河である。源流も廿日市市の冠山(標高1339メートル)に発し、全長は103キロであるが、柴木川、筒賀川などの支流も数えきれない。また、下流域の広島市に達すると、汀線から9キロ上流で7本の川に分かれる。最も大きいのが太田川放水路で、旧太田川(元の太田川)は更に猿猴川、天満川、京橋川、元安川に分流して広島湾に流れ込む。



旧太田川にそそぐ大芝水門からの水 2020年9月12日 著者撮影


太田川は過去に氾濫と洪水を繰り返し、広島市民に甚大な被害をもたらした。それらの回避のために、太田川放水路の建設が計画された。

戦時中一時中断し戦後は再開されて、放水路が完成した。太田川流域の地質は花崗斑岩や広島花崗岩類の花崗岩質が多く、河川の流れで運ばれ、真砂土として川岸に蓄積する。平成26年と平成30年の広島市安佐南区と安佐北区の土石流による災害も、この緩い地盤と関連する。


栄養塩の減少

栄養分指標であるクロロフィル量が平成14年頃は広島湾の金輪島付近で13μg/ℓあったが、現在では5μg/ℓである。沖合域の江田島沖は倉橋島沖でもこの約20年間にクロロフィル量が半減した。



倉橋島沖のカキ筏 2020年9月11日 著者撮影


太田川放水路の河口域から放水路の開始点の大芝門・祇園門の中間にある旭橋付近のケイ酸塩も半減している。人間が長い間に河川や森林生態系を破壊したツケではないかと思う。太田川の上流にある支流の柴木川では、ケイ酸塩は最近10年間ほとんど減少していない。一方で都市化が進んだ下流域では、栄養塩の減少が進む。広島湾でも栄養減が進む。


広島のカキも貝毒・赤潮で生産減

広島のカキの養殖生産量も1980年代にはむき身で3万トンの漁業生産量があり、安定していたが、90年代に入り貝毒と赤潮発生で生産量は急激に減少し一時1.5万トンとなった。 ところで広島のカキは大量生産型の大衆的な生産で、高級品向けや料亭向けではなかった。最近ではコロナで需要が低迷し、1.8万トンでは過剰生産とみられる。そこで考えられるのが生産量の削減である。広島湾の生産量の限界がある。クロロフィル量が豊富でなければ、カキは成長が困難である。

ところで広島県のむき身のカキ生産量は1.8万トンであるが、岩手県陸前高田市の広田湾ではむき身が94.5トンで殻付きで4216トン(2018年)で殻付きをむき身に換算(10分の1)すると422トン、合計では517トンである。広島県のわずか2.9%に過ぎない。ほかにホタテ貝、ホヤと蝦夷石影貝があるので、この生産量を合計しても約1000トン程度で6%程度である。海域生産性が、広島湾と広田湾ではかくも違う。

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人間は恵をもたらす森川と海に感謝を

養殖業の生産量が異なる要因が、太田川水系と気仙川水系の運ぶ水と栄養量の差である。双方ともけた違いに太田川が多い。太田川は広島市の宅地開発や工業の影響などで栄養塩が減少し、陸前高田は、防災堤防で優良な生産現場を失った。そして温暖化でカキは高温に耐えられず疲弊する。養殖業がカキ死骸と付着物を投棄し海底環境を悪化させる。日本人は自然を大切にしたといわれる。江戸の幕藩体制で監視が行き届いていた時そうであったろう。最近は、経済優先と国土強靭化の名目で、自然と環境が壊される。その提供する恵みを失っている。現在の日本人は森と川と海に感謝する気持ちと自然を保護・回復する行動が足りないのではないか。(了)


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