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日本人とは何か

第83回 やせ細る駿河湾と絶滅の危機サクラエビの漁業

一般社団法人生態系総合研究所
代表理事 小松正之
2020年11月12日

海洋は問題の掃きだめか

日本人は、大気中の二酸化炭素の排出は地球温暖化の原因と認識するようになり、大気への危機感がようやく最近浸透してきた。しかし海洋については、その危機感が見られない。福島第二原発の冷却汚染水を福島沿岸に放出することを政府が決定した。トリチウムは水素にもう一つの水素基が結合しただけで安全であると言われる。しかしトリチウムの事故で死亡した例は世界にいくつも見られる。安全であれば、なぜ今までタンクに保持し、また、飲料水や水を使用する工業用水として循環再利用しないのか。また、海洋放出の専門家の検討では、コスト面と風評被害に集中して、国民が最も知りたい汚染水の科学・安全性の議論が不十分だ。


陸上活動が駿河湾を貧しくした


操業図;湾奥、中部と南部に分かれる。水産技術研究所資料が作成したものを引用



左)サクラエビの入札風景;15キロケース 右)サクラエビの親


駿河湾産サクラエビの深刻な不漁を受け、10月31日から今月1日まで、駿河湾や富士川を筆者が代表を務める「一般社団法人生態系総合研究所(東京都中央区銀座8丁目)」が調査した。湾奥や富士川下流、大井川沖や内浦湾ではサクラエビの幼生のえさとなる植物プランクトンの栄養分(クロロフィル量)が少なく、極めて「貧栄養」となっていることが分かった。



水量と栄養が不足する富士川;富士川橋 2020年11月1日 著者


私は湾奥から大井川沖までの合計24カ所(表面から水深50メートル)と、「富士川橋」付近の富士川下流部2カ所で調べた。クロロフィル量、溶存酸素量(DO)や濁度、塩分、水温と流向・流速などについて、瞬時に数値が分かる最新式の機材を用いて調査を実施した。秋漁初日の11月1日に主漁場となった大井川沖は富士川河口よりは多いものの、一般に少なく、興津川や久能沖でクロロフィル量が多少みられる程度であった。

私は駿河湾と富士川沿いでは湾奥に栄養分を供給する雨畑川や富士川上流部なども見て回ったことがある。「(製紙工場や水力発電用導水管の取水のため)富士川の水量は極めて少なく、狩野川、大井川と由比川と田子の浦が貧栄養である。山の養分が河川を通じて主産卵場・生育場に十分に供給されていない。サクラエビの不漁は富士川や他の河川の人工的な原因による生態系の劣化があると考えられる。



駿河湾で海洋観測・調査する著者 2020年10月31日


壊滅的な本年11月1日開始のサクラエビ漁

駿河湾の田子の浦と富士川河口付近は従来、サクラエビの産卵場であり、主たる漁場である。特に春漁の漁場である。しかし、最近10年間以上にわたり、不漁が続いている。近年では1000トンをはるかに下回り、昨年は175(春85トンで秋90トン)トンで本年の春漁は26トンであった。



本年は秋漁が11月1日から12月23日までを予定しているが、本来であれば、禁漁が適切な対応であるが、サクラエビ漁業者は、これができない。11月1日の水揚げ量は4トンのみ。その後のサクラエビの漁獲はほとんどない。見られる魚群も密度が極めて薄く、サクラエビも20ミリと期待される35ミリをはるかに下回る。


調査が示す栄養が貧困な駿河湾

駿河湾全域で最も重要な栄養分であるクロロフィル量は0.2~0.4μg/ℓであり、陸前高田市広田湾での2~3μg/ℓや、瀬戸内海の広島湾の6~7μg/ℓからは大きく下回る。外洋性の黒潮も栄養分が0.5μg/ℓと少なく、どこからも栄養を供給される源がないのが現状である。

駿河湾は、戦後の高度経済成長期以降に第2次産業を優先して、取水と砂利採集が盛んになり、自然環境と第1次産業が生態系の劣化で衰退したとみられる。

今回の調査によれば、駿河湾の全域にわたり、貧栄養の状態が拡大している。これではサクラエビに加えて、植物プランクトンを栄養とする生物である動物プランクトンと小魚類並びにそれを追ってくるアジやイワシ、サバも少なくなる。

秋漁が始まったが、この科学調査の結果から見ると、禁漁をすべき水準。漁獲は期待できず、本来は資源を温存し翌年以降の資源の回復に当てるべきである。そして陸上の企業にも駿河湾の回復への協力を漁業者から訴えるべきである。(了)


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