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日本人とは何か

連載第88回 国際社会と日本 コロナウイルスと魚食を考える

一般社団法人生態系総合研究所
代表理事 小松正之
2021年3月4日

戦後の日本の外交と漁業

戦後、世界の7つの海で自在に漁業をした日本は一時、世界一の水産王国を誇ったのです。しかし国連海洋法条約と米ソの200カイリ漁業専管水域と後の沿岸国による排他的経済水域の設定により外国から締め出されて、日本の200カイリ排他的経済水域に閉じ込められた時から、日本の凋落が始まりました。



1976-77年頃には、「カラスの鳴かない日はあっても200カイリの記事が新聞に載らない日はない」と揶揄されました。それほど200カイリ排他的経済水域の設定は、日本の漁業、水産業にとっても、地域社会と日本経済と政治にとってもとても重要な出来事でした。しかし、今ではそれを知る人々もいなくなりました。遠洋漁業が締め出されても世界第7位の広さを誇る日本の200カイリ排他的経済水域内で、日本漁業・水産業がその再生を図れるし、図らなければならないとの論調と政策論の楽観論が横行しました。


対米追随外交と見捨てられた国内水産業

振り返ってみれば、日本国の外交とは対米への譲歩の一辺倒の傾向が終戦直後からありました。日本漁船を沿岸域に封じ込めたマッカーサー・ラインが廃止されて、南氷洋の捕鯨船団や北洋の母船式サケ・マス漁業など世界の漁場に進出した日本の遠洋漁業は、日本の戦後の復興に大きく貢献しました。地方経済、食品産業、戦後のたんぱく質不足を南極海からの鯨肉が救いました。サケ・マスとマグロ缶詰は戦後の外貨獲得に大きく貢献しました。そしてこのための漁船建造が盛んになり、日本国内の工業の発展と技術の進歩にも貢献しました。

日本の戦後復興を漁業・水産業の発展と展開を通じて支援した米国は、国連海洋法条約での200カイリ水域の設定が米軍の軍事活動を制限しない内容であることを担保してから、200カイリを自国の漁業振興に活用しようと方向転換をしました。これに合わせて、外務省は日本の漁業・水産業を捨てて、対米親和路線を取り続けました。このことは、現在の外交にも共通します。国内産業をおろそかにして、我が国の経済力とマーケット力がなくなれば日本の魅力がなくなり、次第に世界からも軽視・無視される道を辿りました。それが現在の日本です。世界のGDPに占める割合がピークの14.5%から現在は約5%に凋落しました。その先駆けが漁業・水産業でした。


コロナウイルス感染症でも危惧される日本の末路

著者が国際交渉・外交の第1線にいたころは、中国、台湾や韓国は日本の遥か後ろを歩いていました。

それが、今では、新型コロナウイルスのPCR検査体制や迅速な対応ができない。そしてワクチン製造他を見ても政府が訴訟他のリスクを恐れ日本は自力で生産できず米国に頼り、中国は3社もワクチンを製造しています。韓国ですら英国と共同開発しています。今、ワクチン開発とワクチン臨床検査体制のインフラがないと、将来の感染症のパンデミックの際にはまた対応できないことを意味します。主義主張がなく、外国依存の国家に明るい将来があるとは思えません。


人類の世紀に何をするか

本来、国連海洋法は沿岸国が自国200カイリ内資源である海洋生物資源を、沿岸国政府が自国の責任で、最良の科学的情報に基づいて、漁業を管理せよとの条約でした。今の政府は漁業権と漁協などの漁業者の既得権を守っても、水産資源の回復と日本人に対する食料の安定供給は念頭に薄く、魚が食えなくなりつつあります。輸入量もあてになりません。ワクチン開発と同様に、自国の食べ物はまず自国で調達するべきとの基本原則を持つことです。

これからの時代は、これまで私たちが生きてきた延長線上では、生きていけないと考えます。地球温暖化や新型コロナウイルス感染症の問題がその認識を、さらに加速させています。人類の時代(Anthropocene)での私たちの新たな挑戦が始まっています。日本人一人ひとりが行動することです。政治家と政府に任せるだけの時代はとうに終わっています。(了)



国連本部内アナン事務局長と潘事務局長の肖像画前で。2019年5月


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