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日本人とは何か

第96回 最後の清流四万十川の幻想その2

一般社団法人生態系総合研究所
代表理事 小松正之
2021年11月18日

悪くなる四万十川の汚染

8月1日から3日にかけて、四万十川下流域を中心とした四万十川の現状の汚染度合いなどを客観的に図るための調査に出向いた。その結果については前回の本シリーズでもお知らせしたが、「四万十川が最後の清流である」と多くの人が認識していることは誤りである。

11月7日から10日にも私は仁淀川と四万十川の調査に出向いた。今回は四万十川の窪川附近の中流域も科学調査を行った。四万十川は私たち;一般社団法人生態系総合研究所;が調査・分析した中では、他の日本の河川に比べても汚染が進んでいる。しかし、四万十川だけではなく、日本の河川が私たちの調査の結果から見ると、汚染と劣化が進行している。川が悪化していることは、川が注ぐ沿岸域も汚染が進行していることを物語る。そのうち日本の沿岸域からは漁業が無くなるのではと大いに心配している。



四万十川河口付近の左岸の下田地区の河岸堤防;防災用に建設されたと説明された。
2021年11月8日午前 著者撮影


四万十川と日本各地の河川・湾との比較


2021年8月2日 四万十川調査 海・川底 クロロフィル、濁度、溶存酸素


私が代表理事を務める「一般社団法人生態系総合研究所」は、これまでも広田湾・気仙川、大船渡湾・盛川、駿河湾・富士川と万石浦・北上川で科学調査分析を行ってきた。それら各地の科学調査データと比較すると四万十川の現状と問題がわかる。


悪化している四万十川の濁度と溶存酸素量

下記の表からわかることは、汚染の悪化を示す可能性がある濁度が四万十川(中筋川の農道橋下)、後川の本流の合流点、下田地区にある竹島川のアオサノリの養殖場では、他の河川と海域に比較しても高いことである。広田湾や大船渡湾の5~8倍もある。北上川の河口は河川の土木改修工事からの土砂の流出がみられ、また、付近に日本製紙の石巻工場から排水が海洋に放出され、これらが原因で汚濁は進んでいると考えられる。

更に静岡県の富士川でも同様に濁度が高いこと(2.8FTU;富士川橋)が観察されている。(注)FTUとはFornagin Turbity Unitといい、フォルマジン液に光を通したときの濁りを測定するもので、通常の清浄な海水・河川水では0.3FTUが計測される。従って、それ以上大きな値では濁り・汚染が進行・悪化していることを示す。私は、調査の経験から通常の海水・河川水では0.8~0.9FTUまでは清浄であると考えている。

問題は、四万十川水系の中筋川、後川と竹島川の双方と溶存酸素量(DO;Dissolved Oxygen)が極めて少ないのが特徴であることだ。58%、83%と73%は他の地区の溶存酸素量がほぼ100%前後であることに比べれば、極めて低い値である。生物である私たち人間が、コロナ感染症で呼吸が困難になり「ECMO」(人口酸素吸入器)で酸素吸入が必要となるレベルが93%前後である。このことから見て、58%と78%で生物が生息できるのかが疑問視される。

クロロフィル量(µg)も他の地域と比較し、決して高くなく、むしろ他地域に比べても低いくらいである。

このように、四万十川は他の河川と湾に比べても、汚濁度(FTU)が高く、土砂、生物と化学物質由来汚染の可能性が高いこと、溶存酸素(DO)が極めて低いことが特徴で、この現象(溶存酸素が低い現象)は、日本の他の河川では見られない現象である。クロロフィル量に関しても多くなく、栄養状態が良いとも言えない。

11月7日から10日までの仁淀川と四万十川の調査も同様の水質の悪化状態を示した。仁淀川の下流域も農場があり、そこから排出されるとみられる汚染水でとても悪化していた。

今後、これら2つの特徴的要因の原因と対応方法を探っていくことが重要で、急務である。放置すれば今後とも現状からさらに悪化することが危惧される。



四万十川水系と日本の河川水系との比較


資料:一般社団法人生態系総合研究所


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