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太平洋を取り巻く国々と私

第9回 ノーベル賞スタインベックの故郷カリフォルニア

アジア成長研究所
客員主席研究員 小松正之
2015年1月6日
スタインベックとの出会い

米国の作家へミングウェーの「老人と海」では海洋と漁労用語に悪戦苦闘した。ハーマン・メルビルは「白鯨」有名であるが彼は言語の魔術師と呼ばれる。「メルビル学」があると聞いた。そして、彼の難解な最後の著作「Billly Budd」にも苦しみつつ読んだ。

スタインベック(写真)の小説も難解である。自然と人間を愛する細部に配慮した表現が独特である、「怒りの葡萄」と「エデンの東」は有名である。後者はジェイムス・デイーンの出演で一躍有名になったが、小説の主人公は彼の父アダム・トラスクとその父を助けたハミルトン氏である。手にとって読んだのは、2014年5月にスタインベックの故郷米国カリフォルニア州のモントレー郡に出かけてからである。

2014年5月私はモントレーで、生物学者のエドワード・リケットと彼をメンター(精神的な助言者)とするジョン・スタインベックを知る。リケットは海洋生態学と哲学を研究し、スタインベックが彼の生物研究所を手伝い二人は強烈な知識欲と哲学でお互いに影響する。リケットは1948年に運転する自動車と貨物列車の衝突事故で死亡する。彼からモントレー湾の生態系の回復の重要性を教えられたスタインベックは、自ら努力する。

スタインベックはモントレーから内陸東に約20マイル(30キロ)にある現在人口15万人のサリナス市で1902年に生まれた。そこはサリナス渓谷の中心にあり、サリナス川が、北西に流れ太平洋にそそぐ。彼は、農業を営んだ人々に囲まれ、父も一時は小麦の精製工場を経営したが、砂糖の生産が主流となり、倒産した。その後父は郡の財務官として働いた。上層に属した家庭である。


人間を愛した観察眼

スタインベックのサリナスを愛する観察眼は、その著書「エデンの東」にも丁寧に描かれる。一つ一つの植物を丹念に観察し、花、草木、花弁の色彩や植物の高さ、季節の移り変わりや、年による収穫と降雨量とその変動も克明に描いた。そこにはサリナスの自然、農業とそこに働く人々心から愛する気持ちが伝わる。サリナス渓谷とそれを取り巻く自然と人間とその営みを一体として描いている。

「怒りの葡萄」が発表され、彼は労働者の味方であったことが明らかになるとサリナスの農場主はスタインベックの著作は読むべからずとして焼いてしまった。これが却って、人気を呼ぶ結果になる。

「エデンの東」では登場人物が個性的な性格を備える。それが相互に関連する。スタインベック自身は主人公「アダム・トラスク」に描かれる。かれが最も理想として描いたのが、農家や住民を無償の愛で助けたハミルトンである。実の母方の祖父である。


人間も自然も生態系として描く

ハミルトンの娘がジョン・スタインベックの実母であるオリバーである。彼女は父のスタインベックと結婚した。ジョンの兄弟もすべて女であり、母と姉妹から多くの影響を受けた。 3歳年下の妹メアリーとも最も仲が良かった。人間が織りなす模様全体を見て相互に関連して描くのが、スタインベック流である。

サリナスの隣町のモントレーを描いた「缶詰横丁」での主人公は彼の尊敬するエドァード・リゲットであるその中にはあらゆる種類の人間が登場する。雑貨屋の主人の中国人、不良グループでリゲットを助けようとして問題を大きくする連中、売春宿の女主人と売春婦。各種の人間だが社会の低辺に位置する人間に焦点を当てた。

スタインベックはサリナスやモントレーの自然も人間模様もすべてが生態系として描いている。それぞれの人々が相互に関連して生きていることを浮き彫りする。人間も、陸上の、海の生態系もみんな大局的に、総合的に、そして一つ一つを大切な要素と相互作用して描く。このことが、モントレー湾の生態系の回復に力を入れる原動力にもなったと考える。


モントレー水族館に展示されたジョン・スタインベックの説明書

写真 モントレー水族館に展示されたジョン・スタインベックの説明書 著者撮影2014年5月


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