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太平洋を取り巻く国々と私

第17回 ワイタンギ条約とニュージーランド

アジア成長研究所
客員主席研究員 小松正之
2015年4月28日
国土は白人のものかマオリのものか

どこ国の歴史も複雑怪奇で単純ではない。ニュージーランドには先住民たるマオリ(彼等の言葉で普通の人)が住んでいた。そこに、英国人やフランス人が海外領土の拡張に乗りを出した。ヨ―ロッパでの戦争で疲弊した国や、産業革命で過密となった都市から逃れ、新天地で新しい展開求めるヨーロッパ人達がいた。日本は、欧州に対し国を閉じた。太平洋の島々や豪とニュージーランド先住民族は銃や伝染病で殺し合い、人口が激減した。また、虐殺されタスマニアでは白人に全滅させられた。


ワイタンギ条約文

この国への進出は豪への進出の一環であった。民間大使が任命され、その後英民間人のニュージーランド進出が活発になると、土地の所有・占有などのニーズが急速に高まった。英はその後首都をワイタンギからオークランド移した。現在はウェリントンである。(写真)英側の記録ではフランスはマオリに対して乱暴な行為を働くのでマオリが英国に対して、保護を求めたことが、ワイタンギ条約を結ぶ理由とされている。そうであればその後大きな争点となる「国土の主権」をマオリから大英帝国に対して譲る必要がない。

この条約は極めて性急に条約案が作成された。英が作成すべき統一されたマオリ側へのテキストもなく、そして、英文テキストとマオリ側テキストの内容が異なった。また、マオリの酋長は、その条約に反対した者も条約に署名している。だから、彼らが署名の意味を本当に理解していたのか不明である。ワイタンギでの署名後も栄は巡回の署名集めに回ったが、条約の内容を正確に通訳がマオリの酋長に伝えたのか疑問視されている。


条約の「主権」とは何か

英人はニュージーランドで経済活動を実施するのに、土地の所有権を必要とする。農耕、園芸と木材伐採と亜麻生産は自然物活用と土地利用からなりたつ。

しかし、基本的に自然の力(Mana)の恩恵を受けると考えるマオリにとっては、自然の恵みを地域社会で利用する。自然物に対する所有権の概念を持たない。神の所有物である。

ところで、英テキストでは「主権をビクトリア女王に譲渡」するとされるが、マオリ側は主権とは何かが分からない。マオリ側のテキストは、支配権や自然の力とも翻訳されており、主権とは書いていない。これが、今日でもニュージーランド政府との間の紛争の種にもなっている。また自然物にはマオリの支配権が認められている。

各国の憲法や漁業法には水資源と水産資源が国民共有の財産であるとの記載がある。しかし豪連邦法とニュージーランドの法律にはその記載がない。ニュージーランド政府が、ワイタンギ条約の解釈をめぐり、マオリの所有権が認めているので国民共有の財産と明記できない。


条約の見直しと意識改革

ニュージーランド国内にもワイタンギ条約が、不適切な手段と内容で結ばれたとことに深く良心の咎めを持つ人々がいる。この人たちは、ワイタンギ条約の締結の事実と内容について、現在の国民がほとんど知らないことを問題視している。知らなければニュージーランドが直面している問題を解決できないとの考え方で、国民のワイタンギ条約への理解の促進が重要で、その役割は教育が果たすべきであると考えている。ワイタンギ条約に関するワークショップの開催などをし、白人の祖先が行った行為に対して精神的な癒しも求めている。ニュージーランドでは貧困や居住環境悪化と犯罪率はマオリが高い。対立ではなく白人とマオリが正面から向き合い問題解決を図る動きである。マオリによる攻撃的な動きも、マオリの所有権の否定も解決につながらないとする。彼等は、このような動きを、世界の地区、豪や加ブリティシュー・コロンビア州での動きにもつなげたいとの思いを持っている。こんな運動を見ると、ニュージーランドの懐の深さを感じる。


首都ウェリントン市の夜景

写真 首都ウェリントン市の夜景 山本徹氏撮影


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