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日本人とは何か

第2回 日本人の弱点(その2)

公益財団法人東京財団
上席研究員
小松正之
2015年12月24日

私は政策研究大学院大学で外国の若手エリート官僚や国内の官民の幹部候補生を対象に、さまざまな事例を通してリーダーとしての物の見方や考え方を教えた(写真)。

しかし、日本でのリーダー論は処世術や人心操縦術といったテクニックに走る傾向がある。基本的には自分が良くなるためや出世するためにはどうしたらよいかを説いている。社会や国民全体に奉仕して、みんなが将来に向けて良くなろうとの発想がない。自分だけ、目先だけを生きればよいとの考えでいる。企業も含めて組織や社会が発展するためには優れたリーダーが求められているという根本的な理解がないからだ。


リーダーに欠かせないビジョンと実行力

ハイフェッツ他著の『最前線のリーダーシップ』を読んだとき、ようやく探し求めていた核心に出会った気がした。

リーダーシップは、世のため人のための貢献であり、社会を変革するための努力であり、その努力を行使すれば、いろいろの危険が伴うとしている。それは私がそれまでの人生で経験したことを最も適切に物語るものであり、適切な外国のリーダー論が語る内容と一致するのであった。

リーダーは、ボスとか、親分とか、雑用係とか、チアリーダーとか、たんに誰かから選ばれただけの人間で特定の目的を持たない者とは全然違う。つまりリーダーは、将来を展望できるビジョンを持ち、そのことを実行できる人のことである。そのビジョンに基づいて、自分が行動するだけでなく、自分の考えを明確に説明できて、人に行動を起こさせる人間でなければならない。「悪いようにしない」とかいって人を傘下に集めるのは、ただの親分かグループのボスだ。会社組織の親分にしろ、政治家の親分にしろ、大なり小なり公共に属している富を自分たちの周りに独り占めすることに他ならない。


リーダーを支えるマネージャとフォロワー

マネージャは、決められた内容の事業や予算をきちんと実行する人のことだ。組織には組織規定があり、その組織規定に基づいて行動してなくてはならない。そこから逸脱したり、遅れた者がいれば、その枠内に戻す必要がある。組織の中にはいろいろな人間がいるので、サボる人間や能力のない人間もいる。そういう連中を含めて軌道修正して計画通り実行できる人を優れたマネージャーと呼び、それを実践することをマネジメントという。

しかし、マネージャのように決まったことを着実にやるタイプがリーダーになり得るか。世の中は常に変遷している。技術革新や環境の変化、女性の社会進出、国際情勢が変化するといった中で、それらの変化に対して、組織がきちんと対応しなければならない。

逸脱して、新しいビジョンを示しながら皆を説き伏せて組織を変化に対応したものに変革することを「リーダーシップを発揮する」という。

リーダーシップを発揮しようとする人物は突出するが、それを生かせるか否かが企業存続のポイントになる。フォロワーは、リーダーの言っていることを理解し、付いていく人をいう。トップのリーダーに伝えるという意味でフォロワーの役割は非常に大きい。


日本に多い「御用聞き型リーダー」

自分たちの願望をそのまま政治家にぶつけると、政治家が願望を右から左に流すだけなので、「御用聞き型リーダー」だ。政治家が選挙で勝つには、この御用聞き型が一番有効だ。選挙民の願望を叶えるのだから絶大な人気を得る。日本のほとんどの政治家はこのタイプだろう。最近も、東日本大震災の被災地に行って、被災住民の要望を聞いてくる大臣、副大臣と政務官が多いが、震災地の復興に中長期的で具体的なビジョンを示した政治家を一切見ていない。住民の要望に応じて補助金を与え続けている。そして、時間がたてば、被災地には若い人が住んでいない。見るべき産業が育成されないということになりかねない。



写真 政策研究大学院大学で外国エリート官僚にリーダーシップを授業する筆者


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