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日本人とは何か

第25回 三陸海岸の広田湾と米チェサピーク湾(その2)

公益財団法人東京財団
上席研究員
小松正之
2017年6月5日

大局観がない日本人

最近の日本人には物事を深くそして大局的・広く考えることが不足していることを痛切に危惧する。最近の豊洲と築地市場の論争も小池都知事が自分の考えとはっきり示すことが出来ずに都議選に堂々と臨んでいる。たった2週間程度の2020年のオリンピックに1.2兆円を上回る税金・浄財が投入される。造った大型施設は、その後は回転率も悪く維持費に膨大な予算がつぎ込まれる。

税金で施設建設をして業界を潤すワンパターンを日本政府と業界はいつになったら直すのかと、先ごろ米ニューヨークタイムス紙の記者が震災復興予算に触れて批判していた。日本人も税金を納めていない人が増え結局自分の税金である意識がないか、いずれは政府に頼ろうとする姿勢からか誰も無駄遣いを外国のように指摘しようとしない。


大局的な学問と思考が必要な「森川海と人」研究

森川海の研究は、どのような調査が、どんな目的で行われているかが明確でない。日本でも森に木を植える運動があったり、魚付き林の重要性を訴える話が、各地に残ったりしている。水産庁と農林水産省の資料にも各地で植林の活動が行われ、その地点が全国のマップとして表示されてはいたが、その植林が具体的のどの規模で、どんな植種でどの年数をかけてとなると、明快な答えはない。植林によって、川の水質、流量と栄養状態が変化したのかのデータもなかった。

私の故郷は、岩手県陸前高田市広田町である。「森川海と人」のプロジェクトは、我が国の典型的な片田舎であり、80%が山と森林に囲まれて、三陸海岸でも湾の広さが最大規模の海の幸に恵まれる陸前高田や、住田町の気仙川と広田湾の地域から始めたいと考えた。そこには土地勘があった。そう考えた私は、2009年から世界を回りだした。

2011年3月11日に、東日本大震災。大津波が東日本と襲った。わが故郷の陸前高田市も壊滅的な被害を受けた。このことによって、自分の行ってきた活動をさらに加速化した。

2015年から民間企業の支援を得て、基礎的な情報を集積するプロジェクトを開始し、スミソニアン環境研究所やモントレー水族館にも相談した。

世界をめぐり日本を訪ねるほど、このプロジェクトが基本的ではあるが非常に重要であるここと確信してきた。


急激に衰退する日本の海

ところで、最近の日本近海の漁業資源の急激な減少と海洋の変化は、陸上での針葉樹の植林、山林と森林の盛り土工事のための破壊と河川敷や河岸堤防の建設と河口堰の建設などに大きく影響を受けている。

その結果、海洋と沿岸域の藻場や干潟を失い、流入する栄養分が減少し、生産力と環境回復力が落ちた。

2016年には気仙川・広田湾にサケがピークの3分の1しか帰らなかった。魚体は小型化し卵数も卵巣サイズも減少・縮小した。イサダが減少し餌を失ったカツオの回遊も3分の1程度である。スルメイカも、オキアミ、アワビも昆布も減った。危機的状態に役人も政治家も警鐘を鳴らさず、土木工事は継続される。

米国の東岸のチェサピーク湾や西のシアトルのピュージェット湾の研究成果では、沿岸の干潟や湿地帯での堤防建設で、魚類の生息が減少することが証明される。


スミソニアン環境研究所長の訪日と国際シンポジウム

6月19日から28日まで、「森川海と人」の世界有数の研究機関である米国スミソニアン環境研究所のハインズ所長を迎えて、岩手県陸前高田、大船渡と住田町で現地調査をし、国際シンポジウムを開催する。彼から現地の事情を視察したうえで、科学的なアドバイスを得られることを期待している。

6月21日には東京財団主催で「漁業資源管理と公平性」の国際シンポジウムを開催する。現世代の漁業者が資源を枯渇させ、供給目的を果たせず、損失を補てんする目的の補助金をもらい、将来世代のことは考えない。これは現世代と将来世代間の共有資源へのアクセスをめぐる不公正である。

日本漁業は2016年の漁業・養殖業生産量がまた、近年の最低を更新した。なんとか、解決のヒントを国際シンポジウムで得たいと思っている。



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