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日本人とは何か

第27回 100歳まで生きる日本人の新人生観

公益財団法人東京財団
上席研究員
小松正之
2017年7月6日

日本人の長寿はどこまで伸びる

日本は世界でも指折りの幸せな国である。寿命が長い。最近の統計によると現在の65歳の男性は19.41年を生き、女性に至っては24.24年も生きる。そうすると今65歳の女性は90歳までは生きる(厚生労働省統計)。私の同級生はこれに該当する。(写真)

ところで、国連の推計によれば、2050年までに日本人の100歳以上の人口は100万人を突破する見込みである。また、2007年に日本で生まれた子供の半分は107歳まで生きるとの予想である。

これからは長寿が当たり前である。私が陸前高田市広田町という漁村で育った頃は、漁業労働も過酷で、重い巻き網を、みんなが総出で揚げた。そんな重労働には、年齢が行くと耐えられなくて、隠居と呼ばれる人が40歳代で、その後亡くなった。また、女性も60歳代は長生きの方だった。

現在女性の60歳はとても若くて、その年齢には見えない。1953年で男性62歳、女性は65歳が平均寿命であった。現在はそれぞれ80.75歳と86.99歳であるから、男性では18歳、女性では21歳以上も寿命が伸びたのである。


年金支給開始年齢の引き上げと介護保険では対処できない

長寿になると、私たちは、年金や介護のことを考える。60歳で職業から引退したら、その後どのように隠遁生活を送ろうか。また、生活資金は年金だけでは、不足は当然である。

若年齢層が先細り、高齢化が進み、年金制度の改革が何一つ進まず、年金は破たんする。

私たちは、戦後の一時期に通用した終身雇用制が当たり前の制度と考えてきたが、これからはこれが通用しない。

人生が70歳の時には、第3期の生活を過ごしてきた。第1期に小学校から高校または大学まで必要な教育を身に着けて社会に出ていく。18歳〜22歳である。その後第2期として22歳から60歳〜65歳まで、1か所か数か所で働く。第3ステージ引退後の余生を旅行と趣味に生きるである。このような3段階の人生はもう古いし、年金だけでは経済的に耐えられないというのがロンドン・ビジネス・スクールのリンダ・グラッテン教授の主張である。

10年前、瀬戸内海の佐合島を訪ね、70代の夫婦と会話した。「何をしているのですか」と私が訪ねると、この島出身で、大阪から帰ってきた男性は「死ぬのを待っているのです。」と述べた(拙著「宮本常一とクジラ」(雄山閣))。寿命が延びたが、生き方は自分次第だ。


長い人生には無形資産こそ大事

これからは新たなプラス0.5や1.0の期間が加わった第3.5期や第4期も生きる。このような長寿期間にはお金という有形資産が無いと生活はできないが、もっと大切なものは、無形資産である、自分自身が持つスキル(技能)や知識・教養が仕事につながる。教養と哲学は人生を豊かにする。

また、良き人間関係を保っていること、肉体的精神的な健康と心理的な幸福感も重要な無形財産である。脳の健康は極めて重要で、脳は使っても擦り減らない。筋肉を鍛えるように脳を鍛える。脳力で頭脳労働が可能となる。

また、家庭と職場とのバランスの取れた生活も重要である。家庭でマイナス要因を抱えると職場にそれを引きずる。

長い人生には新たなインプットや教育と訓練も必要である。それ無しでは、自らの持つ技能と知識が老朽化し使えない日が来る。休職して一からの研鑽や研修も重要だ。これらの無形資産は、今までとは違う自分をもたらす変身資産である。第3.5〜4期までのステージを生きるには極めて重要だ。寿命が延びて仕事、ボランティア、趣味に生き、その組み合わせを生きる。年金以外の職業収入があると自らの選択肢を多様化する。そして、人生に精神的満足感、ゆとりと楽しみも生まれる。

長寿の社会を前向きに、新たな人生の挑戦者精神で生きることであろうか。年金額削減や支給年齢の引き上げなど後ろ向きの話は、捨て去ることだ。



スミソンアン環境研究所ハインズ所長(69歳)と筆者(前列左2人目)と小中同級生(64歳)ら
2017年6月23日陸前高田市で


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