日本人とは何か
第76回 コロナウイルスと日本の対応(その1)
代表理事 小松正之
2020年4月25日
ウイルスとPCR法
学生時代に十和田湖ヒメマスや宮古湾に回帰するシロザケへのウイルスの存在を最新鋭の電子顕微鏡で研究した。
北太平洋ミンククジラと日本海ミンククジラの遺伝子の違いを検出のためにPCR法(Polymerase Chain Reaction)を使った研究を行った。
新型コロナウイルス病
コロナウイルスは哺乳類や鳥類の病気を引き起こすウイルスで、ウイルス表面のエンベロープ(膜構造)に花弁状の長いスパイクの突起を持ち、外観がコロナ(太陽の光冠)に似ている。
コロナウイルスのうち、人に対して病原性を有するものはヒトコロナウイルスと呼ばれ、風邪症候群を引き起こすコロナウイルス4種類と動物からヒトに感染する2002年に中国広東省で発生したSARS(重症急性呼吸器症候群)コロナウイルス、2012年に中近東でラクダを介して発生したMERS(中東呼吸器症候群)コロナウイルスと2019年新型コロナウイルス(SARS-COV-2)の7種類を呼ぶ。
人間が承知しているコロナウイルスは約500種、それ以外を含め全部で約5000種あると推定されている。今回のコロナウイルス病(COVID-19)が終息してもその次がいつやってきてもおかしくない(米カリフォルニア大学バークレー校教授)。
コロナウイルスは動物と人間の距離が短縮され地球環境や生態系が破壊され感染病が今後も増えると世界の生物学者や社会学者が警告する(米エール大学教授他)。
インフルエンザと新型コロナウイルスの死亡率
インフルエンザはコロナウイルスと同じRNAウイルスで、A、BとC型のインフルエンザウイルスによって引き起こされる。年間29万人から65万人が世界中で死亡するといわれている。
インフルエンザの日本での死者数は2018年と2019年でそれぞれ3000人以上で、インフルエンザはその感染者の死亡率は0.1%と推定される。インフルエンザはワクチンが既に開発済みで、罹っても人々は大騒ぎをしない。
米国のアトランタに本部のある米国疾病制御予防センター(CDC;Centers for Disease Control and Prevention)ファウチ所長は一時、新型コロナウイルス病(COVID-19)の死亡率は2%を超えると予想していたが、彼の予想には感染者数の分母がないので、米の科学者は彼が科学的根拠から死亡率を推定したと考えなかった。トランプ大統領は米国の死者は200万人と言った。1860年代の南北戦争の死者の60万人を大幅に上回ると強調した。
安倍晋三首相の内容不足
4月17日には安倍晋三内閣総理大臣の記者会見があったが、発言内容が米トランプ大統領やWHOの事務局長らの会見に比べて、具体性が乏しく今後の方針がない。北海道大学の西浦先生による死者40万人の予測は不確実な仮定が多すぎのではないか。
日本政府や東京都の対応を見ていると、コロナウイルス病(COVID-19)の対策に対する全体像と将来対策がない。
東京都の知事の発言にも接触防止や感染防止の具体的対策の科学的な裏付けと技術的な手法が示されていない。杉並区や新宿区での感染者数、抗体保持者数の全体を把握するサンプル調査がロサンゼルス郡他のように必要である。エール大学は大学病院で医者と看護師の全員の抗体・血漿の調査を実施中だ。
国会議員は削減を 公務員は今こそ仕事を
安倍晋三首相と自民党と公明党政治家の政治的な駆け引きには国民は関心がない。
給料が減少しない政治家、国家公務員と地方公務員には10万円は必要かとの声にどう対応するか。国会議員は政策も打ち出せないのだから議員数は削減していいとの憤りを述べる人が増えた。また、こんな時に国会議員や国家・地方公務員が在宅勤務でそのサービス量と質を落とすことへの疑問の声もある。
ワクチンが鍵。外国頼みでは?
究極は、いつまでに国民に広くいきわたるワクチンの開発と販売が可能となるかであろう。研究への資金投入と研究に関して言えば、中国、イギリスと米国の研究開発を待つのではなく、自国の研究開発に力を入れるべきであろう。
WHO(国連保健機関)の発表(4月21日WHO記者会見)では、世界では現在3つのワクチンが開発されて、今、人体への安全性を試験する第2段階とのこと。日本政府や、国立感染症研究所と大学の対応を聞きたい。いずれは、ウイルスと付きあって生きていく道を過去の感染症のように選択せざるを得ない。
買い物客で混雑する四谷のスーパーマーケットのレジ 4月14日;著者撮影