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日本人とは何か

第91回 宗教から考える日本人とは何か

一般社団法人生態系総合研究所
代表理事 小松正之
2021年7月1日

哲学、神学、宗教とは

この歳になるまで、神道も仏教もキリスト教も良く知らない。

先回紹介した「未来の宗教」(アンガー著)を読み出して以来の関心が生じた。キリスト教の基礎解説書からカソリック教専門家の対談本、「キリスト教の合理性」(ジョン・ロック)、「ヒンズー教10講」(赤松明彦著)、「孔子」(貝塚茂樹著)、「ユダヤ人とユダヤ教」(市川裕著)と「日本の仏教」(渡辺照宏著)などを読んだ。なかなかわからない。

宗教、哲学と神学の3つの関係と違いは何であるか。哲学は江戸時代、西周が命名した。「Philo」は「愛」、「Sophy」は知識で知識を愛し探求することという。博士号はDoctor of Philosophy (哲学博士)といわれるが、直訳すると知識を愛する博士という意味か。

19世紀以降に学問・知識の中での科学の分離が起こり、科学は明快に客観的な現象と事実に基づくが、抽象的な美学や倫理と文芸などはそのまま哲学に残った。

Theology (神学)。神学とは信仰である宗教を研究し、考察する学問であるとされる。思想や知識を理性的に分析し、研究する哲学とは異なるといわれる。

エール大神学大学院は英語では神性学大学院(Divinity School)を名乗る。神学(Theology)ではない。神に関する研究や学問が神学であり、学問と研究以外の神についてのあらゆることを含むのが神性学であるという。


ユダヤ教、キリスト教とは

宗教とは人間の信条の根本であり、数千年に及ぶ人々の英知の結晶であると考える。その英知(自然の人知を超える力への理解を含む。)の総結集が「神」であると私は理解する。

ユダヤ教は、モーゼに与えられた10戒を含めた「神」の教え「トーラー」、それを文章化した「ミシュナ」とその解釈をめぐりユダヤ教の教師(権威)のラビたちの論争を記録したタルムードを原典とする。それを信仰するのがユダヤ人であり、ユダヤ人とはキリスト教と同じように信仰上の区別と理解される。ユダヤ人は膨大な記録であるタルムードを長年かけて日々の生活の中で学習するといわれる。その学習過程では、人生の生き方、「人には金銭の施しではなくて仕事を与えよ」などを教える。ユダヤ人はよく勉強する。頭がいいのは当然と思う。



バビロニア・タルムード (資料:ウィキペディア)


パレスチナにローマ帝国が進出した頃、ユダヤ教の堕落した既得権者を改革しようとして処刑されたのがイエス・キリストである。キリストを受け継いで、布教に立ち上がったのが聖ペテロや聖パウロである。彼らも処刑され・殉教した。

ローマのセント・ピエトロ大聖堂は聖ペテロが処刑され・殉教した場所に建設された。キリスト教は、命がけの12使徒たちが布教した。300年後コンスタンチヌス帝がローマ帝国の公認宗教とした。(313年)


ローマの聖天使城から見たセント・ピエトロ大聖堂 2016年3月


神道と仏教が日本人を形成;厄除けと家内安全が主体

日本では神道と外来宗教の仏教がある。神道は森羅万象と自然を敬い、家族と社会の安定・安寧を祈願するもので日本では民衆も受け入れた。生まれ故郷でも869年貞観大津波、明治29年三陸大津波と昭和8年大津波、2011年の東日本大震災である。大雨、土砂崩れも多い。神道加護への期待は自然の成り行きだろう。神社は津波が到達しない高さに建設され、避難場所も提供した。

仏教は6世紀に朝鮮半島の百済を通じて日本の上流階級に伝えられた。国を治めるため疫病・自然災害からの厄難よけと人心の安定に利用された。末法思想(仏法が廃れる)からの救済に、例えば平等院鳳凰堂が建立されたとの一説がある。


宇治の平等院鳳凰堂 2017年1月 著者撮影


江戸時代は徳川幕府が死者・戸籍の管理である寺請負制度により人民統制の手段とした。呪術という面と国家統制では神道と結びつきを深めた。私たちは正月に神社にお参りし、厄除けと幸福を祈願しおみくじを買う。

ユダヤ教やキリスト教(特にプロテスタント;新教)のように人生をどのように生きるべきか、人間の統治機構が適切でない場合の現世・制度を良くしようとの思想は神道と仏教には乏しく、為政者の臣民を統治と、人民も自然や為政者からの安定を求めたと考えるのが自然であろう。

このようなキリスト教やユダヤ教の西洋社会とは異なったことが日本人の特質を形づくり、この現在の日本人の特質は今後数百年続くと考えられる。


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