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日本人とは何か

第92回 最後の清流が汚染流に四万十川

一般社団法人生態系総合研究所
代表理事 小松正之
2021年8月19日

日本の田舎の衰退

四万十川は本当に曲がりくねる。源流は高知県と愛媛県の県境に近い不入山(1,336メートル)の近くの1,190メートルの地点といわれる。そこから大小300余の支流を集める。四万十川という名は四万川や十川からついたともいわれるが下流の旧中村市では渡川ともいう。

予土線に乗り、愛媛県の宇和島から列車で窪川まで行ったことがあった。農林水産省に入省したばかりの1980年代(昭和50年代)40年以上も昔であった。日本の田舎は元気であった。宇和海には天然の魚が少なくなり現在はハマチや真鯛の養殖で有名で、宿毛湾ではクロマグロ(適水温は25℃が上限)も養殖している。温暖化により水深10~20メートル程度で海水温が上昇し、30℃を超えた。また、大雨での土砂の宿毛湾への流入でマグロ他の魚類が斃死する。



四万十川の源流から河口までの流域図(資料:国土交通省「渡川水系河川整備計画」から)


清流四万十川

1983年NHK;ディスカバー・ジャパンで四万十川は日本最後の清流と放送された。アユ釣りだけの川だったが、その反響で突然急増する観光客の受け入れに、何の準備もなかったので観光客がマイカーで押し寄せてごみの問題も大きくなった。

2002年(平成14年)には四万十川条例が橋本大四郎知事の下で県条例として作成された。四万十川が良くなったという人に誰一人として、私は出会わなかった。条例に罰則もなく、メガソーラーの規制もないという。



四万十川下流域調査;2021年8月2日午前;筆者、山崎組合長(奥)と山崎清実理事(中央)


悪化する四万十川

堰ができて小石が流れず、河原がやせた。水量も減った。漁獲量が1990年代の10分の1である。アユは100分の1に減った。蛆虫みたいに獲れた。

手長えびは;平手手長えび、南手長えびと手長えびの3種がある。南手長えびは60キロ上流まで生息する。手長えびは減少が著しい。

以前はウナギ(シラスウナギ)が帯状をなして遡上した。

ウグイ、オイカワとコイもいなくなった。

30年前には天然青のり生産が10トンで現在はゼロである。天然アオサノリは30トンあったがゼロである。養殖が現在4トンで、2021年は1.5トンである。桃屋の江戸紫に使われた。河川の濁りが1週間たっても取れない。山崎さんらは水が腐りきっているという。


中流域のショウガ農家からの廃水

ショウガ農家が増え過栄養と過農薬の影響により汚染が進行した。

農薬の臭化メチルは使用禁止となった。

今回、私が四万十町新谷橋付近で川に入ったが河川床の小石が農薬の影響と思われるぬめりでとても歩きづらかった。



写真;四万十町茅吹手の沈下橋新谷橋 2021年8月1日午後


森林は、昭和30年代に植林後、針葉樹林が放置され山林、下草と土壌が荒廃して四万十川水系に流入する水質と水量が変化、減少した。


汚い四万十川を科学データで裏付け

私が主宰する一般社団法人生態系総合研究所が8月2日午前に実施した河川の科学調査結果では、四万十川下流域で本流に合流する中筋川は本当に汚い。濁度がひどく高いし、溶存酸素の量が極端に少ない。50%台と極端に低い。流れも停滞している。

「中筋川は高低差が少ない平たん地をながれ、蛇行が多く、各地に渕が多く、これらが自然浄化を図り清い流れを保ち多くの魚介類が生息した。しかし、水害が発生したので河川改修と堤防を造り淵や中州は消えた。昭和30年代までは天然記念物の二ホンカワウソがみられたが絶滅した。カワウソはコイ、フナ、手長えびやウナギなど捕食していたが、それもいなくなった。」(澤田佳長「四万十川物語」(1993年3月 岩波書店)82ページ)(一部著者修正)。

また、旧中村市内を流れる後川も濁度が高く溶存酸素量が少ない;通常の清浄な海域と河川では100%を超え低くても98%である;70~80%台である。コロナウイルスの感染症の悪化で酸素吸入が必要な血液中の溶存酸素量の下限値は90%である。四万十川が生活排水、農業廃水と河川工事での土砂と生態系の喪失他で汚染され、死に体と言える。これを漁業者や四万十川を愛する多くの人が実感し危機感を持っている。(了)


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