日本人とは何か

第101回　ウクライナ戦争とユダヤ人（その3）

現在でもホロコーストの犠牲者に黙とうをささげる

イスラエルと海外のシナゴーグでは、ホロコースト記念日が設けられ、第2次世界大戦前と戦中のナチスドイツなどに虐殺された600万人のユダヤ人犠牲者に哀悼と敬意を払う。この日はNisanというユダヤ歴の第1月で、通常4〜5月に相当する、これを「Yom HaShoaと」いう。2分間の黙とうをささげて、全ての仕事を停止する。走行中の自動車は一時停止しドライバーは外に出て黙とうする。

米英はホロコーストを止めなかった

ジガルビョム（Zygielbojm）はポーランド系ユダヤ人である。1942年に亡命先のロンドンで、ナチスドイツの残虐非道の大量虐殺；ホロコースト；ヨーロッパ社会のユダヤ人の全面的抹殺；の停止を訴えた。米と英にいるユダヤ人とそれらの国々の政治家に勇気をもって立ちあがることを訴えたが、英米は何も行動を起こさなかった。ジガルビョムの妻と息子を含む大勢のユダヤ人が殺戮された。彼は自殺した。そして、「人類の歴史に前例のない獰猛な悲劇に何もしないのは人間として大いなる恥辱である。何もしない国々も間接的に非難されるべきである」のと言葉を残した。その言葉はワルシャワのゲットー（ユダヤ人居住地）の跡地に今も残されている。

人道に対する罪とは何かを問うとすれば、ナチスドイツの東方拡大政策と進攻によるホロコーストを超える残虐・非道はないが、旧ソ連もユダヤ人の殺害を行っている。特に1881年3月、ロマノフ王朝のロシア皇帝アレクサンダー2世がロシア人の反体制派（一人のユダヤ人少女が混じってはいたが）から爆弾によって暗殺されたが、これがユダヤ人の仕業であるとのデマが出回り、Pale of the Settlement；現在のウクライナを含む広大なロシアと西洋のユダヤ人を封じ込めた緩衝地帯でのユダヤ人殺害事件；ポグロム（Pogrom）が頻繁に発生した。これが1905年まで続いた。この間、全く罪もないユダヤ人の家族が子供から女性まで手足ももがれた。現代でいうフェーク・ニュース（偽情報）が横行し、これらを安易に信じ、興奮したロシア人らによる、何の罪もないユダヤ人に対する憂さ晴らしであった。

英のダブル・トリプルスタンダード

ヒットラーが、ユダヤ人虐殺を意図した。もっともユダヤ人を毛嫌いする歴史はヒットラーに始まったものではなく、上述のようなロシア人による迫害、その前のスペインがキリスト教国になって、レコンギスタが完了した。キリスト教国はユダヤ人の迫害を始め、アラブ・ムーア人の後ウマイア朝で重用されたユダヤ人たちは、オスマントルコ帝国、イタリアのベネチアやオランダのアムステルダムに移り住んで、役人や金融業を営む商人として、成功を納める。しかし、このスペインからの追放で自分たちの土地と国を持たなければならないと決心した。それはユダヤ人のふるさとシオンの丘に帰ることシオニズム運動の始まりである。これが現在のイスラエルの国家建設につながる。

第1次世界大戦前には、英国は、オスマントルコ帝国のメソポタミア地域（現在のイラクやクウェートなど）の膨大な石油の埋蔵量に目を付けた。これを英国がオスマントルコ帝国から奪い取ることを目的としてアラブ民族に、トルコ人への反乱を画策した。その先頭に立って、アラブ人の反トルコ戦争を主導したのが、アラビアのロレンス（トマス・エドワード・ロレンス大佐；1888年から1935年46歳没）である。彼は、アラブ軍と行動を共にし、オスマントルコ帝国軍と戦った。そして英はアラブ人の建国を約束した。こればフサインーマクマホン協定（1915年）と呼ばれる。一方で英国は戦争を遂行するための莫大な資金を必要としたが、その矛先として協力を要請されたのがユダヤ人の大富豪のロスチャイルド家であった。英国は、資金援助の見返りに、パレスチナへのユダヤ人の入植地の建設を認める。これは英外相名を冠しバルフォア宣言（1917年）と呼ばれる。

日本の外交と憲法は

英は仏と露ともオスマントルコ帝国を分割する秘密協定サイクスーピコ協定（1916年）を締結する。英の自国の利益のための3枚舌の外交であった。

さて、露、中と米との関係の中で、日本の外交と国内政策は？　第2次世界大戦後に膨大な犠牲者を出した直後とは現在は全く状況が異なる。その時制定した日本国憲法をどうする。自民党は憲法第9条を維持ししたままで、防衛費は2倍とするのか経済と食糧の安全保障をどうするのか食糧だけでなく、肥料、農薬も労働力も輸入できない時代が到来した。