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日本人とは何か

第114回 台湾訪問とサクラエビ漁業

一般社団法人生態系総合研究所
代表理事 小松正之
2023年7月5日

台湾の東港のサクラエビ漁業

2023年5月30日の朝早く台北駅から新幹線に乗り、高雄市の北東に位置する終点の左営駅に着いた。そして高雄科学技術大学で「日本の水産業の現状と海洋生態系の保護への課題について」講演をした後に、高雄市の南東に位置する漁港である東港区漁港に向かった。



台北南港と高雄の左営を結ぶ台湾新幹線 5月30日著者撮影


日本の駿河湾のサクラエビは禁漁水準

サクラエビ(Lucensosergia Lucens)は、主として駿河湾に生息する。成熟体長は40mmで親は35mmを目安にするが、年々小型化し、早期に頭部が卵を持って黒変(卵の部分)するものが増加している。成熟が早くなっている。産卵は6~7月がピークで20~50mの水深に産卵する。

サクラエビは春漁が3月末から6月上旬で、秋漁は10月から12月までが一般的である。

駿河湾のサクラエビ漁は1960年代後半には8,000トン近くまでの漁獲量があった。田子の浦と富士川河口付近は、従来、サクラエビの産卵場であり主たる漁場である。サクラエビの漁獲量は1997年に1,000トンを割り込んで以来、20年間以上にわたり不漁が続いている。2010年以降では1,000トンをはるかに下回り、2022年は約180トンで2%まで落ち込んだ。



日本の駿河湾でのサクラエビの漁獲量の推移 資料;著者作成


台湾のサクラエビ漁業

午後14時30分東港区の漁会(日本でいう漁業協同組合)の岸壁に到着した。同地区では120隻のサクラエビ漁船が許可を受けて毎年11月1日から翌年5月31日まで操業し平均的な操業日数は120日である。

サクラエビ漁船の許可枠は120隻で、毎日70〜80隻で操業、毎日15キロの箱で600~700箱(約1トン)を生産する。1週間に5日間操業する。


漁場形成

屏東県東港区近海には4つの漁場がある。資源量は大体同じ規模の漁場を形成し、東港付近に3つの川があり、河口に漁場を形成する。

投網は150メートル付近に入れて日中に漁獲・操業する。集魚灯を使用しないで操業する。集魚灯を使わない決まりがある。集魚灯を使うと翌年の資源量が減少する。


TACと個別漁獲割当(IQ)設定

11月から5月31日までの操業。年間漁獲枠は800〜1,000トンのTACを決定する。これは、高雄市にある国立水産試験場からのアドバイスに基づき、これを下回って漁業する。個別の漁船には一隻当たり平等に150キロ/日を割当てる。超過・違反した漁獲物ないし収入を没収し、加工してお土産にあげる。

1995年頃に1,800トンのTACで周年操業した。2000年以降は800トンに下方修正し、1998年に漁獲量が500ドンに下落した。

水産試験所は漁期前に資源調査をしている。日本の場合と同様にエビの頭部に「黒い卵」が発見されると禁漁期を設定する。またエビ体長3センチ以下は採取できない。2022年はTACを900トンに設定した。

TACの上限値は1,000トンで、日本のバイヤーの要請があったので100トンを増加したが、価格を上げてくれなかったので今年は下方修正した。


サクラエビの選別作業

14時30分を過ぎても10時30分に漁網を上げて以来4時間も作業している。入港後、漁獲物の選別作業を乗組員が漁船内の甲板で、そしてご婦人が桟橋で行っている。気温は30度を超えた炎天下で、一尾一尾触りながら、カタクチイワシなど多数の混獲物を選別して、サクラエビのみを取り出している。触るだけでも鮮度の劣化が激しい。


資源管理しない日本と資源を安定化した台湾

キロ値400〜500台湾ドル(2,000~2,500円/キロ)であるが、日本の10分の1である。日本では20,000〜90,000円キロである。日本人のバイヤーが普段から購入している。定期的取引をしているバイヤーがいる。高雄に日本のバイヤーが来て、加工して日本に運んでいる。

台湾産のサクラエビの資源管理(TAC;総漁獲可能量とIQ;個別漁獲割り当て量)を宣伝すると消費者にも良い影響を与えよう。駿河湾のサクラエビはTACもIQも設定していないので、台湾産の方が資源管理を行い資源と環境保護に優れているとPRをすることができる。

王志民漁会(漁業協同組合)専務は、最近は中国からのバイヤーが来ており、日本市場だけがマーケットではないと語った。



サクラエビ漁船上での選別作業 5月30日



船着場でのサクラエビ選別作業。炎天下30℃ 5月30日


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