火災保険 自動車保険 傷害保険 農林水産省の皆様へ 茨城県庁の皆様へ 法人のお客様 お問い合わせ

日本人とは何か

第119回(最終回) 日本の歩む道;自然と環境の保護

一般社団法人生態系総合研究所
代表理事 小松正之
2023年12月28日

経済成長は環境破壊

豪とニュージーランドを訪問した。豪では、11月28日にキャンベラ郊外で自然力を復活させることに努めるマルーン(Mulloon) 農場を視察した。豪大陸は、その数億年前の成り立ちからして水不足大陸であるが、現在では農業と畜産業が盛んである。灌漑用に大量の水を使う。それを自然の生態系の力を活用して、保水力を上げようとの試みである。これは、小川の流れに石、砂と木材で造った水通りが良い堰を造り、同時に水を蓄積し、その水を農業に利用する。川の水がゆっくり流れ、川沿いにある農地の地下水位が上がり、自然に牧草地が青々と茂る。水位が低い農地の牧草は黄褐色で枯れたままである。これは、乾燥大陸の豪においては山火事の防止と延焼の抑制に大変役立つ。湿った牧草地と山林では山火事が起きず、起きても頻度が少ない。

山火事が米カリフォルニア州と豪で頻発しているが、都市化と農業で大量の地下水と河川水を使用し、結果的に乾燥した状況を造り、自然・人為の発火による火事を頻繁に発生させている。自然とのかかわりを変えるだけで、解決できる。



写真左;マルーン農場の責任者Hall氏と豪農水林業省専門家  写真右;地下水位が上昇、緑の牧草地へ


NZ最高裁判所の判事 ニュージーランドの川と森林に訴訟権

ニュージーランド最高裁判所のウイリアムズ(Joe Williams)名誉判事を訪問するに際し、いきさつがあった。

一般財団法人鹿島平和研究所の平泉信之会長から、NHK番組で、自然環境保護を扱った世界の特集を見るようにとの助言をいただいた。ポーランドの最高裁判所とフランスの最高裁判所が森と河川に人格を認めて、訴訟を起こす権利があることを伝えていた。画期的であった。更に調査をとの助言をいただいた。その発端はNZと報道されていた。

これが契機で、河川や森林の訴訟権が米では存在するのかについて、チェサピーク湾に注ぐパタクセント(Patuxent)川のリバーキーパーのトットマン弁護士に質問した。そこから訴訟権(Standing)の概念を、米の例;ハドソン川のストーム山での発電所建設を巡っての訴訟で、初めて川の景観をめぐって訴訟が提起された例を教えてもらった。これらが一連の流れである。

2014年、ニュージーランド北島のワンガヌイ川(Whanganui River)とウレウエラ森林(Urewera Forest)には人格と同様の権利を認めて、訴訟権(Standing)が認められた。



Joe Williams NZ最高裁判所名誉判事(中)、ケネディー元駐日NZ大使と筆者


河川と森林の訴訟権をNZが認めるに際してのウイリアムズ名誉判事の役割を尋ねたが、判事はNZ国会が法律を制定し与えたものと明言した。


マオリには土地の個人所有意識なし、自然は親類で皆が共有

「ウ」判事は、マオリと欧州人の考え方の違いを説明した。欧州人はすべて契約にもとづき、かつ所有権を主張し、それが根本的な人間・土地との関係を規定する。すなわち、人間が自然・土地を所有しその所有関係の契約に基づいて、人間と自然の関係と人間同士の関係も決まる。すなわち、所有者が発生し他の人間が労働者・奴隷となる。その契約に反することはできない。

一方、マオリの世界では、自然の空、山、海、河川と森林はそれぞれ、母であり父であり、祖先であり、自然と人間は親類関係(Kinship)で成り立つ。所有の概念もなく、契約の考えもなく、山、川、海と森が自然を人間に与えたら、人間は敬いをもって接し、マオリは他に対して与えて評価される。他から奪い、蓄積することは評価されない。自然がもたらす恩恵に感謝する。日本のアイヌもイヨマンテ(熊送り)儀式でマオリと共通であろう。


経済成長ではなく自然保護が真の豊さをもたらす

日本は自然を大切にし、自然に感謝し、敬う国だ。江戸時代と明治時代の初めまでは、日本は、自然を敬い、保護した国家・国民であった。それが、現在の乱獲、乱伐と乱開発と福島第一原発処理水の海洋放出ではいけない。21世紀における自然・環境保護が将来の地球という資産を次世代と将来への継承につなげる。目先の経済活動の優先は、結局は将来の大切な資産を食いつぶし、棲めない地球に近付ける。正念場である。

(完)


カワシマのホームページへ戻る