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太平洋を取り巻く国々と私

第26回 日本人とは何かを考える

公益財団法人東京財団
上席研究員
小松正之
2015年11月12日
日本人への影響

日本人の歴史を考えれば、縄文時代と弥生時代に遡ることができる。神話の世界では国生みがある。キリスト教やユダヤ教の天地創造である。古事記や日本書紀の神話は中国の神話の影響を受けていると思われる。

日本人とは何かを考える場合、私は近代日本人に最も影響を与えたのは、明治維新と米国による日本占領であると考える。其れまで、日本人の文化やものの考え方を形作っていたのは、中国や朝鮮半島の国であった。蘭の影響はあったが、東洋的な思想的基礎と文化的かつ教養的な素地の上に、明治維新ではイギリス、フランスと米の文化的、技術、制度と軍事などの影響を受ける。


明治維新はなんであったか

18〜20世紀、欧州世界は革命を興し、民主主義的な時代を迎えた。絶対王政が倒れ、フランスや英国では民衆やブルジョワジーの力が政治体制を大きく変えた産業革命も興り遅れて先進国の仲間入りしたドイツやロシアのような国でさえ、革命がおこり、ロシアでは帝政が倒れた。為政者が変わったが苛酷な生活の実態は変わらなかった。資本主義が進んでも、封建制度の被支配階級や労働階級の生活と身分制度は改善されなかった。

明治維新は、中国やインドの西洋支配に日本の封建社会の武士階級の若者が危機感を感じ起こした革命である。民衆が貴族や僧侶から権力を奪ったフランスやイギリス革命と違い、平民や資本家階級の革命ではないのである。江戸時代の平和の時代に封建制度の上に乗っかり、安閑として、統治や実務能力にも事欠く多くの上級武士に対し、問題意識が強く実務に長けた下級武士が起こした革命が明治維新であろう。彼らの常識と先入観は、強い軍事国家の建設である。重商主義もそのための手段であった。明治国家は、富国強兵と殖産興業に力を入れたが庶民と平民を置き去りにした。

近代国家となって、技術や機械と富国と殖産をもたらす制度に変化を齎したように見えたが、国民の基本的人権も認められなかった。世界の強国と軍事力で肩を並べるのが目標であった。軍事力優先策は遅れた帝国主義の性格を持ち、人口の希薄な地帯は西洋の先進国にすべてを取られた後であった。西洋は、豪州とニュージーランド、ハワイと米西海岸も保持した後であった。日本の進出の余地はミクロネシア、グアムとパラオなどの南洋諸島と、人口の過密地帯の中国を避けた満州、朝鮮半島と東南アジアである。


戦後の日本

日本の連合艦隊のハワイ真珠湾攻撃で開始された第2次世界大戦の敗戦後、日本国の基本的構造を改変したのが米である。米国は日本を二度と軍事的に立あがらない国家にしようと、平和国家として理想主義的な改革を実施した。憲法改正、財閥解体、内閣制度改革、教育制度改革と農地改革と漁業権改革である。巨大な集中力の所産の軍隊と財閥の解体である。地方から大量に供給された兵隊の元を断つことであった。農地改革と漁業権改革であった。移動が困難なように自作農と漁民として土地と資源が少ない沿岸に縛り付けた。

軍事力は持たせない方針が、冷戦と朝鮮動乱で、日本を西側の勢力としての活用に転換した。米の都合に合わせて、自衛隊が創設された。最近では中国の膨張に対して対応する安保法制も米軍への支援体制の強化が中心である。米軍への協力が集団的自衛権と呼ばれる。頑健な軍国主義国家が、戦後は米国にとって最も従順な国家となった。


日本人とは何か

現場レベルと職人的な技能と能力は、世界でも有数の高いレベルであろう。しかし、政府や巨大組織で、将来展望と長期ビジョンの意思決定をする人物は不足しているのではないか。大局観と哲学が欠けて見える。今がよければよい。長期的で根本的な制度や仕組みづくりには手を付けたがらない。

一方、他人に配慮する、細かい気配りや仕事ぶりと時間の正確さでは世界でも相当に高いレベルにあり、よき特性と誇ってよいだろう。日本人とは何かは、これから考えたい。



写真 平洋ミクロネシアの国際機関で、太平洋諸国や豪、米出身の職員と 2014年7月


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